研究課題
本研究の目的は、胃切除術を受けた胃がん患者が自らの健やかな食生活をマネジメントするために、ICT(Information and Communication Technology)を活用した自己管理支援ツールの作成と、そのツール使用による自己管理支援プログラムを開発し、その効果を検証することである。本研究は2段階構成のプロジェクトとして遂行しており、第1段階として前研究の調査結果をもとに、自己管理支援ツール(モバイルアプリ)の作成を行った。申請者が平成26~28年に実施した前研究では術後半年間の胃切除術後患者の実態調査を行い、セルフケア能力が高いと術後後遺症状が軽い傾向であることや、就労の有無など生活スタイルによってもセルフケア能力や後遺症状に差があることがわかった。詳細な分析の結果、退院直後が最も後遺症状が強くセルフケア能力が低くなり、その後も時期によって症状が異なるため、セルフケア能力の維持と向上を目指した定期的なサポートが退院後も必要であることが明らかになった。これら術後の時期に応じた症状の変化や対応、日常生活や食生活に関する情報等を整理し、アプリ開発業者および研究者との専門家会議にて検討しながらモバイルアプリの開発を開始した。患者と医療者がリアルタイムで情報を共有することを目指し、Webアプリを採用した。症状の程度は尺度を用いて得点化し、体重とともにグラフで可視化した。チャット形式で入力するなど患者が使いやす仕様を検討した。最終年度はアプリの試用を行い、操作感やシステムに関する問題点を抽出し、改良を行った。自己管理支援プログラム開発に至らなかったが、今後はこれを用いた効果を検証し、胃切除術後患者の自己管理支援に取り組む。