研究実績の概要 |
妊婦を対象に睡眠、マイナートラブル、精神的健康状態、睡眠衛生の関連を検証するためにアンケート調査を行った。研究対象者は、妊娠経過が正常であり、既往歴に精神疾患や睡眠障害がない者とした。質問紙は、基本属性、睡眠の評価にPittsburgh Sleep Quality Index日本語版(PSQI)とThe Epworth Sleepiness Scale日本語版(JESS)、精神健康状態の評価にHospital Anxiety and Depression Scale(HAD)尺度、マイナートラブルの評価にマイナートラブル評価尺度、睡眠衛生の評価に睡眠改善に重要な習慣行動32項目を使用した。有効回答167部(有効回答率55.3%)を分析対象とした。 PSQIによる睡眠障害の判定は52.1%、JESSによる日中の過度の眠気ありの判定は39.5%であった。PSQIの平均値は6.0±2.74点で、妊娠後期が中期に比して有意に高かった(p=0.005)。JESS得点の平均値は10.1±4.37点で、妊娠時期による有意差はなかった。これらの結果は、妊娠進行に従い睡眠は悪化するという先行研究を支持した。また、マイナートラブルの質問で眠気ありと回答した妊婦は149名(89.2%)のうち52%が睡眠障害と判定され、妊婦健診で睡眠の悪化が見過ごされている可能性が示唆された。 睡眠障害と判定された妊婦はそうでない妊婦に比し、不安得点、抑うつ得点、マイナートラブル苦痛度度が有意に高かった。PSQIを従属変数とする重回帰分析の結果、「妊娠時期」(β=0.23,p=0.002)、「不安」(β=0.20,p=0.002)、「一日のリズムを付ける」(β=-0.33,p=0.000)であり、一日のリズムをつける睡眠衛生によって、睡眠の悪化を防ぐ可能性が示唆された。
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