研究課題
2018年度から妊婦を対象とした睡眠とメンタルヘルスの関連を明らかにするための横断調査を実施した。その結果、 Pittsburgh Sleep Quality Indexによる睡眠障害の判定は52.1%、The Epworth Sleepiness Scaleによる日中の過度の眠気ありの判定は39.5%と、非妊婦に比して、妊婦では睡眠障害を有する者が多いことがわかった。また、マイナートラブルの質問で眠気ありと回答した妊婦は149名(89.2%)のうち52%が睡眠障害と判定され、妊婦健診で睡眠の悪化が見過ごされている可能性が示唆された。睡眠障害と判定された妊婦はそうでない妊婦に比し、不安得点、抑うつ得点、マイナートラブル苦痛度が有意に高かった。PSQIを従属変数とする重回帰分析 の結果、「妊娠時期」(β=0.23,p=0.002)、「不安」(β=0.20,p=0.002)、「一日のリズムを付ける」(β=-0.33,p=0.000)であり、一日のリズムをつける睡眠 衛生によって、睡眠の悪化を防ぐ可能性が示唆された。アクチグラフを用いた縦断的な睡眠調査は、2022年度から機縁法による対象者のリクルートを再開した。2組の対象者に対して、妊娠末期から産後4ヶ月までの夫婦と新生児の睡眠調査が実施できた。母親の睡眠は、妊娠末期から睡眠効率が80%台と低く、産後1週間に60%台まで下降した。その後、母親の睡眠効率は1ヶ月、3ヶ月、4ヶ月と新生児/乳児の夜間睡眠時間の延長に伴い回復傾向を示したが、80%台にとどまった。一方、父親の睡眠効率は、母親の妊娠末期から産後4ヶ月までの間90%前後で推移していた。今後は、夫婦と新生児/乳児の組み合わせで、母親の一日の睡眠・覚醒の周期を視覚化し、母親の睡眠確保に向けた対策を提案する。
4: 遅れている
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、アクチグラフによる縦断的な睡眠調査に対して研究協力がいただける対象者が少なかった。しかし、機縁法で対象者に研究協力を依頼することで、本来の縦断調査に協力いただける対象者を複数名確保することが可能となった。
引き続き、機縁法で対象者に研究協力を依頼する。また、改めて、産科の一般診療所に研究協力依頼を試みる。少人数となるが、妊娠中から産後1年までの夫婦と子ども3者の睡眠データとメンタルヘルスの経時変化を提示できるようにデータ収集に努める。
当初予定していたアクチグラフによる睡眠調査が困難であったため、アクチグラフ購入計画が必要なかった。しかし、2022年度からアクチグラフによる睡眠調査が再開できたので、2023年度は追加分のアクチグラフを購入する予定である。
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