近年わが国では欧米にははるかに及ばないものの、高齢者や成人男性を研究対象として社会経済的地位(Socioeconomic status:以下SESと略)と健康との関係に着目した研究が行われるようになってきた。しかし、女性や母子を対象に据え、SESがどのように母親の健康や育児ストレスに影響を与えるのかを明らかにした研究は少ない。 本研究は、SESが育児中の女性の健康関連QOL(Health Related Quality of Life)と育児ストレスに及ぼす影響を検討する目的で、SESと女性の健康状態と育児ストレス、主観的幸福感との関係を解析しようとするものである。 本年度は、1つの国内学会でその成果を口頭発表するとともに、論文にまとめ投稿した。さらに、看護系の国際学会では、ポスター発表での登録が認められた。これらの学会発表では、昨年度までのデータを中心に、自記式質問表を用いて1~3歳未満の子どもを保育園に預けている381名の女性を対象とし、アンケート調査を行なった結果を分析することによってその成果の一端をまとめた。 しかし、かねてからの計画通り母集団をさらに増やし、統計学的にもデータの信頼性を確保する目的で、本年度はさらに数か所の保育施設等に調査を依頼し、回収も進んではいたものの、結果的には諸般の事情で回収数が思うほどには集まらなかったことと、前回収集したデータとの地域差や、社会状況の差による強いバイアスの発生が考えられたことにより、データを混合するべきではないと判断した。よって、本研究は今年度の新しいデータの追加は行わないこととした。
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