研究課題/領域番号 |
17K12296
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
福島 裕子 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40228896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リプロダクティブ・ヘルスケア / 児童養護施設 / 思春期女子 / 基本的身体感覚 / 健康 |
研究実績の概要 |
研究者が開発したケアモデルによる個別ケアを1年から1年半の期間実施した思春期女子のうち、退所した1名を除く3名にさらに継続して長期の個別ケア介入を実施した。 研究参加者はこれまで個別ケアを受けた女子4名のうち、退所した1名を除く、継続介入の承諾が得られた女子3名である。研究参加者の年齢は17歳から18歳である。研究参加者と相談した日時で定期的に個別ケアを実施した。1回のケアで関わる時間は、研究参加者の日常生活リズムを乱さないよう、原則60分程度とした。一方的な押し付けにせず、女子自身が自己選択、自己決定できるように関わっていった。実施期間は平成29年4月から平成30年3月まで、一人12回から18回の個別ケアを実施した。いずれも、3月に施設を退所した時点で、ケア介入を終了した。2年の長期介入による効果検証を、面接データの質的分析によって行った。 かかわりの中で女子も自分自身のこれまでの生き方や人間関係、今後の未来について語る場面が多くあり、自己の内面の変化を自分で語る場面も見られた。この年齢は成人女性の発達プロセス “転換期(transition)”にあたり、これから先の人生の新たな方向性を展望し、新たな状況や、新たな役割、責任などに適合していく時期である。Franzらの「生涯発達の複線モデル」においても他者との相互関係が重要な位置づけで、退所後の自己のことや自分の将来を身近な問題として考える時期であり、不安定感を支援するのに他者との相互の関わりが重要な時期である。従って、この時期の思春期女子にとって、安心・安全を経験できる助産師との長期のかかわりは、からだの健康支援のみならず、語りながら自分自身を見つめたり考えたりする場となり、これから社会に出て独り立ちする心構えを補強する場になっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、長期介入の実践を主として行った。3名の対象女子と定期的にかかわる時間を確保し、長期介入のケア評価をするためのデータを収集することができた。ケアの受け手の女子の経験を丁寧に検証するため、今後、当事者の視点からケアニーズを明確化し、具体化できる。。本研究で検証され精錬されるケアモデルは、施設退所後の生活で性の自己管理や自己決定ができるための、個別性・継続性のある支援モデルとなり、学術的新規性と独創的な特徴を持つ。さらに、女性健康看護学の学術的な基礎資料となり得る。そこにつながる貴重な介入データを得ることができたため、おおむね順調に進行している判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ケアモデルによる短期介入、長期介入の効果の評価をさらに進めていく。GiorgiとManenを参考にした現象学的アプローチ法により、ケアによる自己の「身体」や「性」の経験のされ方やその変化、ケアが本人の経験世界にもたらす意味を解釈しながら、ケアモデルの有用性や課題点を、女子の経験世界から明らかにする。 可能であれば、施設を退所した後のケアの効果を検証するため、3名の女子の追跡調査を行い、質問紙調査と個別面接調査によって、ケアモデルによる介入効果を量的・質的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り予算執行した結果。2686円の残額が発生した。この理由は、データ収集にかかる交通費や謝金が当初予定よりも少額であったためである。この残額は、次年度のデータ分析にかかる経費に使用する。
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