研究課題/領域番号 |
17K12296
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
福島 裕子 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40228896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 児童養護施設 / リプロダクティブヘルス / 思春期女子 / 経験世界 |
研究実績の概要 |
リプロダクティブ・ヘルスケアを受けた思春期女子の経験構造とケアの意味をGiorgiの方法で現象学的に分析し、明らかにした。 助産師と出会うという出来事は彼女の諸々の過去の経験とそこからくる諸々の予期を背景とした複雑な経験構造となっており、強い緊張や強い不安を経験させる。しかしこれまで出会った大人たちとは異なり、助産師が自分を恐怖や脅威にさらす人ではないとわかり始めると、女子の空間と時間の経験構造は変化する。自分のためにセッティングされ、自分のためだけに向き合う大人がいる空間は、安心できる“居場所”として経験され彼女を引きつけ、日常の生活空間である居室から、わざわざ助産師とあうためにその部屋に足を運ぶようになる。そして「助産師と1対1で会って話をするという出来事」は、楽しみで心待ちにする出来事として経験される。リプロダクティブ・ヘルスケアで向き合う助産師との関係性のコンテクスト(文脈)において、自分を否定せずありのまま肯定し受け止めてくれる他者、いたわりのまなざしを向けてくれる他者として助産師の存在を経験すると、思春期女子は次第に、過去の出来事と連結している身体や自分自身を、ありのまま受け入れ、肯定するようになる。自傷行為の身体部分や社会的な痛みを、助産師に“まなざされ”“触れられ”“丸ごと認められ”ながら、女子は、自己のとらえやあり方を見つめなおしていた。そして過去の出来事と連結している身体や自分自身をありのまま受け入れ、新たな意味づけをし、自分のからだや未来を大切にしようと思うようになっていたことが明らかにできた。また、思春期女子が自分の身体や自分自身を大切にしたいという動機づけられるためには、思春期女子の生きられた経験としての助産師の存在が大きく関係していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和1年度は研究者が入院加療し、職場復帰後も、疾病の治療を継続することが必要であり、特別措置の中で勤務も継続していた。そのため研究に取り組む十分な時間の確保が困難であったため、計画通りの研究実績を上げることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究結果から、児童養護施設の思春期女子の将来の性の自己管理・自己決定に向けた内発動機を高めるリプロダクティブ・ヘルスケアモデルを修正、構築する。 研究協力児童養護施設スタッフとワーキンググループを構成する。研究3のリプロダクティブ・ヘルスケアモデルを共有し、施設職員として実施する際の困難さや戸惑い、ガイドブックに求める内容について、ワーキンググループで複数回協議し、ガイドブック案を作成する。作成したガイドブック案について、各施設で一定期間試用し、活用の実際や課題を明確化し、追加・修正をして、最終版とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和1年度は研究者が入院加療し、職場復帰後も、疾病の治療を継続することが必要であり、特別措置の中で勤務も継続していた。そのため研究に取り組む十分な時間の確保が困難であったため、計画通りの研究に取り組むことができなかった。
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