今年度は、ケアモデルの継続的な効果の検証、およびケアモデルの汎用性を目指し多児童養護施設との協働研修を実施した。 児童養護施設を退所し2年ほど経過した本研究参加者たちへの継続調査を行なった。その結果女子たちは、月経や避妊に関する疑問や不安、交際相手との悩みや、実際に妊娠・出産について、個別介入した助産師に、ラインや電話などで自主的に連絡し相談をしていた。研究参加者1名には、当時の助産師のかかわりについてレトロスペクティブに振り返ってもらう面接を実施した。その結果、女子は、児童養護施設での助産師のかかわりが、自分の体を意識できたこと安心できる場であったこと、そして助産師のことを、“自分を肯定してくれた人”“安心して相談できる人”ととらえていた。以上より、児童養護施設で個別に受けるリプロダクティブ・ヘルスケアモデルで関わる助産師は、施設退所後も性や生殖に関して個別に相談ができる場となれることがわかった。 またA県内のB児童養護施設のスタッフ32名を対象に「リプロダクティブ・ヘル スケアガイドブック」の素案を用いた協働研修会を実施し、自由記述の質問紙調査を実施した。その結果、「性について大人として真剣に向き合い、児童との関わりも職員として対応の考え方を学んだ」「自分を受容し大切にしたいと思う気持ちをもってもらうことが必要」「安心・安全の経験をすることで、自分を大切に思えるようになって、性に関する自己決定権ができるようになると学んだ」など、ケアモデルの根底に重要な“ケア実践者の姿勢”や“安心・安全の経験”の重要性に気づいたスタッフが多くいた。一方で「性の問題はまだまだ、勉強不足の所が多い」「受容的というよりは指導になる傾向があり、性行動自体を肯定する、もしくは否定しない対応は難しいと感じる」など、「性」に向き合うスタッフの困難感や今後に向けた学習ニーズも明らかになった。
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