本研究の目的は、母親の感じる育てにくさの構造を明らかにすることである。これまで健康な乳児を育てる母親たちは、子育てをしている中で「理想と現実の乖離」や「環境から受ける閉塞感」を持ち、「育児を仕事志向する」語りが特徴的で、完璧な育児を目指すあまりできない自分に直面すると著しい自己否定感を抱くこと、母親に対し適切な支援が提供されなければこれらが「育てにくさ」に繋がると考察した。 以上をもとにアンケートを作成し、健康な乳児を育てる母親が感じる育てにくさとそれに影響を与える要因を明らかにした。A県内の協力の得られた保育園、子育て支援センター、産前産後ケアセンター28か所の施設に230部の研究協力依頼書を送付、グーグルフォームを用いた質問紙調査に回答が得られたのは132名(57.3%)で、すべてが有効回答であった。 平均年齢32.8歳±5.3歳、仕事ありが118名(89.4%)、なしは14名(10.6%)、支援者あり130名(98.5%)、なし2名(1.5%)であった。 132名のうち育てにくさを感じるは11名(8.3%)、感じないは96名(72.7%)、どちらともいえないは25名(18.9%)であった。 子育ての受け止め方を4件法で聞いた質問15問を対象に探索的因子分析(主因子法、因子の数:相関行列固有値1以上の数、プロマックス回転)を行い、潜在因子を検索した。その結果、15項目において14項目が因子負荷量0.3以上を示し、1項目のみ0.23であったため除外せずに第1因子に加え、5因子に要約できた。5因子はそれぞれ<育児拘束感><育児不安感><育児責任感><育児疎外感><育児にまつわる情報獲得>とした。 「育てにくさ」の有無と年齢、5因子の関係について一元配置分散分析を行い、効果量を算出した。<育児拘束感><育児不安感><育児責任感>が育てにくさに強く関連していた。
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