児童虐待相談対応件数は年々増加し続け、2018年度も既に半期ベースで過去最高となっている。育児を担う父親・母親は自分自身のしつけが“虐待”とみなされるのか、他者の視点を非常に気にしており、その悩みは育児不安に影響を及ぼしている。本研究の目的はしつけに悩む両親が自分自身分でその危険度をトリアージできる尺度を開発し、子育て世代に対する包括支援ケアシステムを構築することである。本研究では父親・母親が自分自身しつけを判断できる尺度を作成することで不要な育児不安を減らし、それらを用いた子育て世代包括ケアシステムを構築することで、有効な育児支援につながると考えられる。 研究は計画通り、父親に対するインタビューを行い、乳幼児をもつ父親は、【父親の育児・しつけ観】と【生育経験や夫婦を基盤とした育児姿勢】を基盤として育児やしつけを行いつつも、【漠然とした育児に対する畏怖】や【父親の育児への関わりにくさ】を認識していた。また育児と虐待の境界として【虐待が入り込む育児の隙間】を感じていた。研究参加者の全員が育児に関わりたいという意思のある父親であった。しかし日常的な育児の中に虐待に転じる可能性のある様々なコードが抽出され、子どもの属性や、親の体調、子どもの泣きなどがそれらのトリガーとなる可能性があったことが明らかになった。現在、英文誌に投稿中である。さらに今までの知見を統合し、「母親および父親のしつけセルフトリアージ尺度」を開発し、原著論文として掲載された。その他、日本語版Quality Assessment Tool for Quantitative Studies(J- QATQS)の作成および信頼性の検討を行い、原著論文として掲載された。
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