研究課題/領域番号 |
17K12326
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
泉川 孝子 摂南大学, 看護学部, 教授 (80413243)
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研究分担者 |
真野 祥子 摂南大学, 看護学部, 教授 (90347625)
天田 城介 中央大学, 文学部, 教授 (70328988)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DV被害者支援 / 支援システム / 看護職の困難感 |
研究実績の概要 |
本研究に関する前研究課題の、2011年度4~5月に収集したデータを再検討し、「DV被害者支援機関と当事者が抱える課題からの看護職が担う支援の検討」をテーマに、第39回日本看護科学学会学術集会で示説発表をおこなった。DV被害者支援機関の従事経験者6名と被害当事者を対象に、FGIを3回実施した。DV被害者は生命の危機を伴う状況で、保護に対する意思決定が不十分なまま、警察を介して保護されるケースが大半を占める。そのため、DV被害者ができるだけ早く避難する決心と覚悟を持つこと、また医療機関や支援機関は、共にDV被害者を孤立から守り、連携し継続的な支援の必要性を認識していた。一方、DV被害当事者からは、社会関係を絶たれ、孤立を余儀なくされるため共感的な支援を求めていた。診療の補助等で関わる看護職は、DV被害者の特徴的なうつ症状や不定愁訴を理解してサポーティブに関わることが、被害者が打ち明ける契機となり早期発見の第一歩に繋がると考える。 また、「看護職のDV被害者支援における困難感の検討」をテーマに、機関誌「母性衛生」に投稿した。本稿は、医療機関に勤務する看護職9名を対象にグループインタビューを行い、DV被害者支援に遭遇した際の支援において、どのような困難を感じているのか明らかにすることを目的とした。分析結果は、外来勤務者は、【DV被害の不確実性】が生じて介入は断念され、【DV対応への負担感】を抱いていた。一方【虐待通報システムの応用】や【外来でのDV対策への関心】は、【外来の相談システムの運用 】に繋がっていた。病棟勤務者も【病棟でのDV対策への関心】があり、【入院中の支援システムの必要性】として医療相談室との連携等を認識していた。しかし、治療後に精神的な訴えがなければ退院となるため【被害者支援に対するジレンマ】となっていた。また【DV被害判断への知識不足】を感じていた等であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度の計画としては、2017、8年度に引き続き看護職が抱えるDV被害者への対応における困難さの検討として、①DV被害者支援機関と当事者が抱える課題からの看護職が担う支援の検討、②看護者が抱えるDV被害者の対応における困難感の検討(実態調査後、A総合病院)のデータを再検討で評価し示説及び論文で公表した。本課題は、前研究課題の成果を元に地域においてDV被害者の支援に関わっている他職種の思いを再度分析することにより、本課題の目的が明確になると考えた。DV被害者により近くで寄り添う支援者のプロジェクトチームづくりをふまえて対象者(協力者)を募りたい。一方、職場環境の諸事情(母性看護学・助産学領域教員の減少、産科病棟閉棟による実習施設の開拓)で、研究課題に取組む時間調整がつかなかった。しかし前 研究課題のデータを再検討し、第39回日本看護科学学会学術集会では示説発表を行った。他に機関誌「母性衛生」に投稿し2020年4月に掲載された。また地域のフィールドとして、助産院等を開設している助産師に研究の協力依頼を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、研究活動としては情報収集や研究フィールドとの交渉が主となった。しかし前研究課題であった、①DV被害者支援機関と当事者が抱える課題からの看護職が担う支援の検討、②看護者が抱えるDV被害者の対応における困難感の検討(実態調査後、A総合病院)のデータを再検討で評価し示説及び論文で公表した。その成果をもとに、2019年度は、看護職及び地域におけるDV被害者支援者の参加も含めたプロジェクトチームと協働する予定であった。今後は、地域においてDV被害者に支援に関わっている他職種に研究目的を説明し参加を募って、DV被害者支援プロジェクトチームづくりを開始する。特に地域に根ざす助産院の助産師の参加は進んでおり協力 が得られる見込みである。加えて、当初の計画において、対象となっていたB医療機関の変更も含めて検討し、2020年度計画の実施に向け進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の計画は、前研究課題である看護職が抱えるDV被害者への対応における困難さの検討として、①DV被害者支援機関と当事者が抱える課題からの看護職が担う支援の検討」、②看護者が抱えるDV被害者の対応における困難さの検討(実態調査後、A総合病院)の再検討と評価を公表はできた。しかし、新たな課題への取り組みの遅延にも繋がった。昨年度に引き続き研究代表者が所属する母性看護助産学領域の管理責任が私事1名となった。教員減少や少子化に伴い実習施設である産科病棟の閉棟に伴う実習施設確保等の日常業務の煩雑化により、研究への時間 確保が困難な状況であった。実習施設確保に伴い多施設の特徴は知ることができ情報収集はできたが、研究フィールドである医療機関や地域における支援者と交渉が整わず研究の進行が遅延したため、人件費・謝金、その他においての支出額が未使用となった。しかし前回の研究課題から、収集していたデータの整理を行い再分析し検討できたので次回につながる成果が得られ学会発表や学会誌に投稿する成果や支出はあった。また今回の研究に関わる情報収集については、ほぼ予定に近い支出となった。現在、地域においてDV被害者の支援に関わっている他職種への研究依頼、参加協力を募りDV被害者支援プロジェクトチームづくりとして、特に地域に根ざす助産院の助産師への依頼は進んでおり研究計画の実施に向けて進める予定である。
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