妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)の妊婦の血圧は妊娠初期および中期に比較的高値であり、夜間の生理的な降圧が減弱する特徴を有する。しかし、妊婦の血圧変動性(visit-to-visit variability in blood pressure:BPV)については検討されていない。本研究では、第1段階として、妊婦健康診査から産後1か月健康診査までの血圧をカルテから調査し、BPVがHDPの血圧管理の指標になり得るかを検討する。第2段階として、HDP発症の生活習慣リスク因子を明らかにし、妊婦へ生活指導を行う指標を作成することを目的とした。 第1段階は、周産期一次医療施設で妊娠12週未満に妊娠の診断を受け、同施設で産後健康診査まで継続受診した妊婦497名のデータを収集した。分析は、HDP妊婦と非HDP妊婦の比較ならびに妊娠20週未満、妊娠20週以降early onset typeの発症時期、late onset typeの発症時期以降の3群間のBPVを比較した。その結果、年齢やBMIが高く、非妊時体重が重く、妊娠初期の収縮期血圧および拡張期血圧がHDP群の平均以上の値を示すような場合や妊娠中期に拡張期血圧の低下を認めない場合に、HDPのリスク因子になり得ることが示された。また、HDP妊婦は妊娠末期にBPVが大きくなることが示され、BPVがlate onset typeのHDPの指標になる可能性が示唆された。 第2段階は、妊婦にアンケート調査を行いHDP発症の生活習慣リスク因子を明らかにする予定であったが、Covid-19感染拡大の影響を受け調査できなかった。今後はHDPの発症や重症化を予防するための生活習慣を明らかにしていくことが課題である。
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