本研究の目的は、在宅医療を受ける子ども達が成人期に移行し社会生活を営む過程について、その現状と課題を明らかにすることである。最終年度では、当事者の支援者(行政・医療・福祉・教育の各専門家)へ行った面接データを分析した。 結果、行政職の担当者は、当事者の『ライフステージ合った生活が目標』であり、『成長し変化する対象に対応』するためには『支援者間のチームワークが必須』であると認識していた。医師は、対象者への『複雑な支援環境』を感じており、『環境改善に向けた活動を継続』する中で、対象の『身体管理方法が向上していることを実感』していた。彼らの『成人期以降の適切な生活環境が必要』であり、『人員と資金の充足が課題』であった。学校や訪問看護ステーションなどの看護師は、『母親の理解を重要視』しながら、対象の『日常生活を淡々と援助』することを積み重ね、『個々の特性を考慮』し、『本人の可能性を信頼』していた。社会における対象の『複雑な課題を認識』しながらも、『関係者(専門職種)間の要として活動』し、『みんなで一緒に地域で生きる』世界を開拓していた。社会福祉専門職業従事者および介護職員は、『ライフステージを考えた家族支援』と『利用者の意思を尊重した支援』を『専門職間の有効な連携』のもとに実践していた。その中で、『地域社会制度における課題』に気づき、『地域資源の拡大を計画』していた。一方、自らが行う『支援の判断と評価に苦慮』する面もうかがえた。特別支援学校教諭は、『医療がクローズアップされる教育現場』において、『関係者間の意思疎通に苦慮』しながらも、『子どもの教育の重要性を強調』し、『学校の体制の充実を希望』し、『より良い教育を目指して奔走』していた。 以上、各専門職者は社会における課題を認識しながら当事者への支援を行なっていた。今後、実施した支援の評価をどのように行うのかが課題ではないかと考える。
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