本研究対象者全員で、断乳開始後から乳腺腔の厚みと導管の直径ともに、経時的に退縮している画像が確認された。断乳前日からの乳腺腔の厚みの変化では、右乳房においては断乳30日目で統計学的有意差が認められ、左乳房では断乳開始後の4ポイント(断乳1日目、3日目、7日目、30日目)で統計学的有意差を認めた(unpaired t-test、p<0.05)。導管の直径では、両群とも断乳開始後徐々に縮小し、断乳30日目では消失所見を認めた。乳汁分泌状態については、用手搾乳群では左右乳房から乳汁分泌が持続していたが、圧迫法では右乳房で乳汁分泌が完全に停止していた。乳房緊満状態は、断乳開始後、両群ともに断乳3日目をピークに軽減しており、本研究中に乳腺炎を発症したものはいなかった。 超音波画像で得られた乳腺腔の厚みの変化と導管の退縮画像より、圧迫法(おにぎり搾り)は乳頭刺激を回避しているため催乳ホルモンの分泌が起こらず新たな乳汁産生は誘発されていないこと、乳体部全体を圧迫し乳管内に停滞する乳汁を排乳することで、乳管内の乳汁うっ滞を起こすことなく乳腺の退縮に効果的に作用することが明らかとなった。圧迫法は左乳房においてより効果的であり、右利きの場合に右乳房乳体部に効果的な圧力が加えられずセルフケアが不十分であることが、乳腺の退縮所見から乳汁停滞と関係があることが示唆された。したがって、断乳時の乳房ケア方法として圧迫法を推奨する際には、右乳房のケアが不十分とならないよう助産師の介入が必要であることが明らかとなった。
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