研究実績の概要 |
助産師外来・助産師健診を有し, 1対1の継続的支援と女性主体の出産を推奨する1診療所および4助産所において, 妊娠出産経過に異常がなく出産した出産後1 年以内の女性10名, および本研究協力施設で助産業務に10年以上従事している助産師10名を対象とし, 妊娠期セルフケア実施内容について 半構造化面接調査を実施し, その逐語録を内容分析法(Berelson B.) に基づき分析した. 妊娠期セルフケアは 586記録単位を抽出, 分析後, 7カテゴリー・26サブカテゴリーが生成された. 身体的側面3カテゴリー(279記録単位, 47.6%)は,『妊娠期の身体づくり』『母児を育む栄養』『母乳育児の備え』であった.『妊娠期の身体づくり』は記録単位全体の29.4%を占め, 妊娠期セルフケアの主軸となるカテゴリーであった. 心理社会的側面4カテゴリー(307記録単位, 52.4%)は,『お任せにならない「私のお産」』『児への愛着』『1対1の助産ケアがもたらす時間と空間』『妊娠生活を楽しむ心の余裕』であり, 各記録単位数の割合は, 心理社会面が身体面を上回る結果となった. 妊娠期セルフケアは, 運動・食事・体重などの身体的セルフケアに加え, 不安や恐怖感の軽減, 児に対する愛着, 納得できる出産に向けた自覚や覚悟, 安心や信頼のもと自分を表出できる1対1の助産ケア, 義務感なく妊娠期を楽しむといった, 心理社会的セルフケアを女性と助産師両者が重視していることが明らかとなった. 心理社会的な妊娠期セルフケアは, 身体的セルフケアを支える土台ともなり, 精神の安定が更なる健康行動の促進に繋がると考えられた. これら26サブカテゴリーを26尺度とするセルフケアアセスメントツールの原案を作成し, 妊娠期女性へのパイロットスタディを進めている状況である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ローリスクの妊娠期女性に対する良好な出産準備状態を評価するセルフケア・アセスメントツールの開発を進めているが, 2019年度においては, 聞き取り調査対象者である助産師10名, 産後1年以内の 女性10名の20名のサンプルサイズを確保した上で調査できた. Berelson.B.らの内容分析による質的分析により, 妊娠期セルフケアは, 7カテゴリー・26サブカテゴリーが生成された. 2020年度中には生成された 7カテゴリー・26サブカテゴリーをもとにアセスメントツールの原案を作成し, パイロットスタディ実施し, 引き続き信頼性・妥当性の検証のための調査に移る予定であった. アセスメントツールによるパイロットスタディは30例実施, 原案の修正を行った. しかし. 2020年度初頭より2021年現在まで, 新型コロナ肺炎予防対策により, 調査対象者の確保が困難であった事情もあり, 尺度原案修正後の検証が進んでいない現状である.
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今後の研究の推進方策 |
妊娠期のセルフケアアセスメントツールの信頼性・妥当性の検証のため, 研究協力施設において,感染対策に十分配慮し, インフォームドコンセントを適切に行いながら, 妊産褥婦約300症例に対して, 出産前後の2種の心理尺度も併用して本調査を実施する. その後, 本格的な縦断的調査を実施し妊娠期のセルフケアアセスメ ントツールの検証を行う. そのためには, 同意を得られた妊産褥婦の出産前後における調査研究実施のために, 各施設勤務臨床助産師の協力が不可欠であり, 人件費を投入しなが ら研究対象者数を増やす努力を行い, 研究者の時間を確保する. また, 検証のための姙産褥婦約300人以上の十分なサンプルサイズ確保のため には, 2021年度の研究計画延長の上, 研究成果が得られるように計画を実施する.
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