研究課題/領域番号 |
17K12360
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
五十嵐 稔子 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50347473)
|
研究分担者 |
乾 つぶら 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00512667)
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
佐道 俊幸 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (50275335)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 分娩 / 妊娠期 / インタビュー / デルファイ法 / 電子母子健康手帳 / 実証研究 |
研究実績の概要 |
我が国における年間約90万人の出産数のうち、半数は身近なクリニックで、半数は病院で産まれており、これまで分娩は近隣の身近な場所で行われてきた。しかし近年、少子化や産婦人科医の減少ならびに高齢化に伴い、分娩を実施する施設数は年々減少している。分娩施設の集約化によって家と病院との距離が遠くなり、分娩のための入院時期の判断基準や、緊急時の対応に関して、これまでとは異なる基準で対応しなければならない事態が増えると予想される。 一方、日本の助産師教育の中で、入院時期の診断はあまり教育されていない。入院の適切な時期は、施設の地域性や特性も関連し、診断技術の習得は卒後教育の中で培われている。また、卒後教育においても一貫した考え方はなく、それぞれの施設で、それぞれの専門職が経験を積み重ねて診断能力を高めていると考えられる。 本研究は、助産師・産婦人科医師を対象にインタビュー調査し、遠方居住の妊産婦への課題と対応策から、ケア基準を抽出する。それを基に、デルファイ法によって、抽出されたケアに対する合意の一致率を評価し、ケアプログラムを開発と実証研究を行う。 研究実施計画は、(1)インタビュー調査は、遠方居住(自宅と病院との距離が60分以上とする)の妊産婦に、分娩時の診療を行ったことのある助産師と産婦人科医師を対象とする。逐語録の分析は、Nvivoを用いて内容分析により行う。(2)デルファイ法は、助産師と産婦人科医師を対象に行う。調査は3回行い、対象者らの意見を集約する。(3)デルファイ法の結果より、プログラムを作成し、電子母子手帳を連携して臨床現場にて実証的に検証する。 現在、全てのデルファイ法を終えて、分析を行ったところである。今後、電子母子手帳のコンテンツとも連携し、実証的に検証を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度の半ばに倫理審査の承認が得られた。奈良県および大阪府における、病院とクリニックに勤務している産婦人科医師および助産師を対象者とし、リクルートおよびインタビューを実施した。25名の対象者から同意を得られ、半構成的インタビュー調査を実施した。インタビュー調査は個別に行ったこと、また産婦人科という、常に緊急事態が起こる科で、クリニックの医師も対象としたため、対象者との日時の約束をしたり、約束の日時と分娩が重なるなど、インタビューの完了に時間がかかってしまった。 得られたデータを逐語録におこし、内容分析で分析したところ、5つのカテゴリーと17のサブカテゴリが得られた。 H30年度はインタビュー結果から得られた103個の項目を用いて、分娩のための入院の判断に関するデルファイ法をスタートした。16名の助産師と、9名の医師を対象とし、無記名のアンケート調査による方法で実施した。多忙な医療関係者からの調査用紙の回収に時間がかかってしまった。 H31年度はデルファイ法調査を終え、分析したところである。今後、分析結果を基に、臨床で使えるプログラムを作成する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の方針として、デルファイ法で得られた入院時の判断基準を基に、臨床で活用しやすいプログラム案を提案する予定である。デルファイ法で得られたカテゴリーには「妊婦健康診査において観察しておくこと」1項目、「妊娠中に、妊婦にあらかじめ説明しておくこと」11項目、「産婦から電話があった時に、分娩進行の予測と来院の必要性を判断するためにカルテで確認する項目」11項目、「産婦から電話があった時に、分娩進行の予測と来院の必要性を判断するために妊婦に確認する項目」10項目、「電話での判断基準・来院を促す基本方針」4項目、「来院時の入院可否の判断と対応の基準」13項目、「全体を通した基本方針・判断基準の考え方」4項目、「もし入院のタイミングが早すぎた場合の、入院後の方針」2項目、「入院後に陣痛を促進させるために有効であると考えるケア」5項目が選ばれた。 現在、これらの項目は、全て対象者に報告したところである。 今後は、これらの項目が臨床でのように活用できるのか、具体的なプログラム案を作成し、電子母子手帳における活用も含めて、実証研究を行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度中に実証研究を行い、論文発表まで行う予定であったが、インタビュー調査に時間がかかって計画が遅くなってしまったため、昨年度は予定よりも支出が少なかった。 残り1年の間に、実証研究で行う費用と、論文投稿および学会発表にて、予算を使用したいと考えている。
|