本研究は、学童期・思春期に生体肝移植を受けた子どものレジリエンスを高める看護実践ガイドラインを開発することを目的とした。 学童期・思春期に生体肝移植を受けた子どもは、身体面、心理・精神面、社会面に対する子ども自身の捉えや自己概念の変化、これまでの発達課題への取り組みなどが、移植後の発達課題や長期的な療養生活とセルフケアを含めた生活調整への取り組みに大きく影響する。特に、移植前後の身体面の変化は、それまで築き上げてきた身体への信頼が揺らぐ体験となり、不確かさや自己概念の揺らぎが喪失感につながりやすい。そのため、症状緩和をはじめ、子ども自身が回復を実感できるように、急性期の段階から身体面へのケアを十分に行うなど、回復への環境を整えることが重要であり、このような看護実践は、内在する力を発揮するためのポジティブな変化を促す重要な要因となることが明らかになった。また、症状が安定している時期においては、自分自身や環境との相互作用のなかで、集団への帰属意識や時間的展望の変化による将来への思いなど、発達課題を反映した困難に直面し、そのことが長期的な療養生活とセルフケアを含めた生活調整への取り組みに影響を与えている。 医療技術の進歩や新たな薬剤の開発などにより、移植後の長期生存が可能となる中で、生体肝移植を受けた多くの子どもが小児期から成人期へと移行しているため、長期的な視点で身体的・心理的・社会的な回復への環境を整える看護実践を行うことは、その子なりの健康的な生活を確保し、移植後の生を主体的に生きることを支えることにつながる。
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