本邦において産後うつ病の母親は9.0%(山縣,2013)、すなわち10 人に一人でありその数は多い。産後うつ病は、育児不安や母子の精神的不健康に留まらず、母親の自死や母親による子殺しといった最悪な結末を迎えることも多い。2015 年の東京都監察院と順天堂大学の共同研究の中間報告において日本の周産期自殺率は8.7/出生10 万(英国2.3/出生10 万、スウェーデン3.7/出生10 万)と高いことが明らかになった。特に産後の母親の自死は妊娠期の2 倍でその多くは産後うつ病を罹患しておりその対策は急務である。妊娠期からリスクのある母親をスクリーニングし継続して関わることと予防的介入プログラムが必要といえる。 本研究は、保健師・助産師が実施する「産後うつ予防のための両親学級」による産後うつ病予防に与える効果を検証することが目的である。研究は準実験デザインで、両親学級の研修会を開催し、保健センター5か所・病院施設がこの両親学級を導入し実施した。 その結果、実施した保健師は気になる妊婦と夫を把握することができ、家庭訪問など早期に実施して悪化を防ぐための行動がとれるようになった。また、両親学級を実施した病院の助産師の研究報告では、妊婦と夫に産後うつの情報提供をすることにより、産後うつは誰でも成り得ること、また夫からの情緒的支援により落ち込んだ気持ちが軽減できており、夫婦で予防に向けた行動がとれていた。実施する助産師・保健師は、自分のかかわりを見直し話を聞く姿勢に変化していること、また妊婦や夫と楽しく過ごすことが自分たちを活用してもらえることにつながることなど感じることができていた。 2020 年はコロナにより両親学級が開催できない状況となった。その中でこの両親学級の内容を動画にしてDVD を貸出すなど工夫してコロナ禍に合わせた両親学級の展開が行われた。
|