研究課題/領域番号 |
17K12381
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
亀田 直子 摂南大学, 看護学部, 助教 (70737452)
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研究分担者 |
家高 洋 東北医科薬科大学, 教養教育センター, 准教授 (70456937)
池田 友美 摂南大学, 看護学部, 准教授 (70434959)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 子ども / 重度脳損傷 / ケア提供者 / ケア / 看護 / 質的研究 / 現象学 / 研究方法 |
研究実績の概要 |
本研究では重度脳損傷児の生活を支えるケア向上のための研究方法開発を目指し、①ケア提供者たちの重度脳損傷児へのケア経験を質的に記述する②研究代表者らの先行研究と本研究での新たな質的記述とを比較・検討し、質的記述を拡大、深化させる③解釈学的現象学的方法を基盤として実施してきた研究方法が新たなフィールド・対象者に適応可能かどうかを確かめ、修正する。 2017年度は、施設入所中の10歳重度脳損傷児のケア提供者たちが、彼の再現性に乏しい微細な動きを読み取ろうとする経験を質的に記述した(Kameda & Suzuki, 2018)。この研究ではケア提供者70名の研究参加を得て、参加観察とグループインタビューを併用してデータ収集を行い、van Manen (1990)の解釈学的現象学的方法を基盤として分析を行った。結果、ケア提供者たちの『シェアリング』、言い換えると、「医療記録や申し送りでは扱われてこなかった不確かさや感情変化をも含む経験をシェアし、追体験し、自身の経験として蓄えること」が明らかとなった。この『シェアリング』によって、ケア提供者たちは重度脳損傷児の再現性に乏しく微細な動きを読み取る際の不確かさを減じたり、次の動きを読み取ることに役立てたりしていた。この研究で実施した研究方法並びに分析に焦点を当てて考察し、その成果を国際学会にて発表予定である。池田・亀田は新たな研究フィールド開拓に向けて複数の在宅療養支援施設を見学し、施設代表者に研究の概略説明を行った。亀田は当該施設で実施可能な研究計画を立案し、倫理審査受審予定である。池田は、医療・看護・療育分野における本研究の位置づけを目指し、重度脳損傷児を包含する概念である重症心身障害児へのケアに関する文献検討を行っている。家高は現象学・解釈学の視点からの方法論的考察、研究方法開発に向けて、質的研究方法に関する文献検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度に予定していた倫理審査受審が遅れているため、新たなデータ収集には至っていない。しかしながら、2013年度より実施してきた研究データの分析・記述を進め、施設入所中の10歳重度脳損傷児の微細な動きを読み取ろうとするケア提供者たちの経験を開示し、英文誌掲載に至った。論文査読者との議論、小児看護・障がい児教育を専門とする池田、現象学・解釈学を専門とする家高のスーパーバイズ並びに研究チーム加入(池田2017年4月、家高2017年9月)により、先行研究で実施した研究方法並びに分析方法に関する考察が当初の予定より進展している。したがって研究進捗状況は「おおむね順調」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は①先行研究の研究方法に焦点を当てた考察結果を学会発表する。②倫理委員会の承認を得て、在宅療養支援施設でのデータ収集・分析を行う。③症例数を増やし、かつ先行研究での質的記述と比較することにより、重度脳損傷児の再現性が乏しく微細な動きを読み取ろうとするケア提供者たちの経験の質的記述を拡大・深化させ、学会発表、論文執筆を行う。 2019年度以後は症例を重ねつつ、研究方法並びに分析方法の検討に重点を移し、重度脳損傷児のケアに携わる臨床家、研究者誰でもが実施できる研究方法、分析方法の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
倫理審査受審の遅れにより新たなデータ収集ができなかったため、ICレコーダー、パソコン購入を見送ったことと、インタビューデータの逐語録化のための費用を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。2018年度は倫理委員会の承認を得てデータ収集を行うため、パソコン・ICレコーダー購入費、インタビューデータの逐語録化の費用が必要となる。国際学会参加のための旅費、論文投稿のための英文校閲費、論文掲載費(もしくはオープンアクセス権購入費)として助成金を使用予定である。
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