研究実績の概要 |
本研究の目的は、キー・コンピテンシーの概念に基づく「一般病棟の認知障害高齢者に対する身体拘束を回避した転倒予防看護実践自己評価尺度」の開発と信頼性と妥当性の検討である。最終年度は、選定された54項目の尺度原案を用い、全国1,128名の一般病棟看護師を対象に質問紙調査を実施した。結果、22県52病棟に所属の1,128名の看護師に質問紙を配布し、308名(回収率27.3%)の回答を得、1回目303名(有効回答率98.4%)、2回目133名(有効回答率98.5%)を分析対象とした。 項目分析、探索的因子分析(主因子法プロマックス回転)の結果より、尺度は5因子22項目の構造となり、【その人らしさを発揮した活動を後押しするケア】【入院時から安心し落ち着けるケア】【身体拘束を回避・解除する転倒予防連携】【その人の視点に立ちその人が納得できるケア】【技を駆使して身体拘束を回避するケア】と命名した。尺度のモデル適合度指標はGFI=.886、AGFI=.855、CFI=.949、RMSEA=.061で、CFIは基準を満たし、AGFIとRMSEAは許容範囲内より、因子妥当性、構成概念妥当性を判断した。看護問題対応行動自己評価尺度(定廣ら,2002)とのPearsonの相関係数はr=.792(p<.001)より、基準関連妥当性を確認した。Cronbach's α係数は.947(p<.001)、再テスト信頼性係数は.783より、内的整合性、再現性と安定性による信頼性を確認した。 本尺度の使用により、認知障害高齢者は、拘束による心身への苦痛やBPSDの発現の回避につながる。看護師は、ケアへの苦手意識や不安の軽減から拘束回避やケアの改善に役立つ。看護師チームは、拘束回避の転倒予防ケア実施状況の評価を共有でき、不必要な拘束回避が可能となる。総じて、一般病棟の認知障害高齢者への転倒予防ケアの改善に役立つ。
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