研究課題
本研究の目的は、認知症専門外来を受診する患者・家族に対して専門性の高い看護を提供するための指針となる看護実践モデルを開発することにある。本年度は、事例検討から得られた認知症専門外来において必要な看護の要点について、その実施状況と有用性を検証する目的で全国調査を行った。対象施設は、各都道府県に設置されている認知症疾患医療センターおよび認知症専門外来を標榜している大学病院や公立病院の計643施設とし、調査対象者は各医療機関の認知症専門外来において1年以上勤務する専門職1名とした。調査方法は無記名式Web調査とし、看護の要点として20の実践項目を設定し、実施状況について4段階評定で、有用性について5段階評定で尋ねた。回収数は109人、回収率は17.0%であった。回答者が所属する医療機関は、地域型認知症疾患医療センター(53人、48.6%)が最も多く、次いで連携型認知症疾患医療センター、大学病院等であった。回答者の職種は、看護師(78人、71.6%)が最も多かった。看護の実施状況は、20項目中13項目が80%以上の実施率であり、「患者・家族の緊張不安を解くよう笑顔でかかわる(99.1%)」が最も高く、「認知機能検査を行う(59.6%)」が最も低かった。有用性について、80%以上が大変有用と回答した項目は「患者・家族の緊張不安を解くよう笑顔でかかわる」「外来に訪れた時から患者の体格、姿勢、歩行状態、表情、表情、言動を観察する」であった。一方、「家族が同席していたとしても、まずは患者本人から優先して話を聴く」「認知機能検査を行う」については、大変有用と回答した者は50%台であった。認知症専門外来の看護の要点については、実施状況と有用性の回答結果から概ね妥当であることが検証された。今後は医療機関の外来体制による看護実践モデルの検討が必要である。