研究実績の概要 |
転倒予防は超高齢化社会における最重要課題である。私共はすでに普通のスリッパのつま先の上に400gの重りがついた転倒予防筋力トレーニングスリッパを用いて転倒予防効果を実証しているが、本研究では重りの重さを400g、300g、200g、と100gごとに調節ができ、大きさも調整できる個人に合ったテーラーメイドの転倒予防スリッパを作成し、要支援状態にある高齢者への転倒予防効果の有用性を実証した。 研究デザインは無作為比較試験である。A県の8か所のデイサービスに通所している要支援1,2の高齢者75名(女性61名、男性14名、平均年齢4.4±6.8歳)を介入群とコントロール群に無作為割り付けした。1年間の前向き観察研究であり、介入群は29人、コントロール群は30人が1年間完全に研究に参加した。介入群、コントロール群ともに施設における通常のリハビリテーションを受けた。介入群は、1週間に1~3日、自分が心地よいと感じるおもりがついたスリッパを履いて10~20分間、自分に合った歩行速度で歩いた。転倒リスクは、介入群、コントロール群ともに調査前、調査を開始して3か月、6か月、9か月、および1年後に、Berg Balance ScaleとTinetti Performance- Oriented Mobility Indexによって測定された。その結果、介入群の転倒リクは両スケール共に大幅に改善した(Friedman’s test, それぞれp<0.01)。一方、コントロール群は転倒リスクが高くなった(Friedman’s test, それぞれp<0.05, p<0.01)。転倒者は介入群が介入前10人から1年後は7人に減少し、コントロール群は9名から16名に大幅に増えた。 以上のことから転倒予防筋力トレーニングスリッパは高齢者の転倒予防に有用であると考えられた。
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