本研究は、日本の看護基礎教育課程における認知症看護教育の現状と課題を明らかにした上で、海外の先進的な教育について、特に認知症看護に特化した教育の構成(カリキュラム)と教育手法について情報を得て、看護基礎教育課程修了時に求められる認知症看護実践能力(コンピテンシー)を提示した。これらの成果に基づき、看護基礎教育課程における認知症看護の教育カリキュラム案を構築することを目的としている。 令和5年度は、最終年度としてこれまでの研究を統合し、看護基礎教育課程の学生が認知症看護の実践能力をもつ上で学ぶべき内容を網羅的に抽出した後、他の科目でも学修できるものを除き、認知症看護に特化して学ぶべき内容を選定した。その結果、看護基礎教育におけるカリキュラムの構成要素として「老化と認知症(知識)」「認知症看護の原則(知識)」「認知症の人とのコミュニケーションの特徴と関わり方の原則(知識と演習・実習)」「認知症の人の言動の意味(知識と演習・実習)」「認知症の人の強みの捉え方(知識と演習・実習)」「認知症の人に関連する倫理的側面(知識)」「身体拘束の原則(知識)」「認知症の人本人の意思を把握すること(知識と演習・実習)」を提示した。 教育方法としては、うなずきなどの身体的な同調を活用するなどのコミュニケーションスキルを修得する演習を行うことが有用と考えられた。学生が認知症看護の実践能力を発揮して成果を得るためには、認知症をもつ人に関心を寄せ、その人の立場にたつことなど倫理的観点を配慮して関わり続けることが重要となる。実習で学生が自身の経験を肯定的にとらえるためにも、教員や臨地の実習指導者が認知症看護の実践能力を高め、認知症の人との関わり方のモデルを示す必要がある。
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