研究課題/領域番号 |
17K12424
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
川上 千春 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (70643229)
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研究分担者 |
山本 由子 東京医療保健大学, 看護学部, 准教授 (00550766)
亀井 智子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (80238443)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | せん妄予防 / 高齢者看護 / 看護学教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、以下の2点であった。 1.高齢者入院患者のせん妄予防に効果があるといわれているHospital Elder Life Program(HELP)を導入し、プログラム実施内容、入院高齢者の満足度、日常生活活動状況、せん妄発症の有無等の観点から、日本版HELPの有効性を評価する。 2.HELPに携わる看護学生ボランティアを教育するとともに、HELP実施事例より得られた分析内容から看護学教育へのHELP活用方法、および院内システム構築のための最良の方策を明確化する。 1.に関しては、研究開始時の2015年からのデータを蓄積し、HELP in SLのケア提供を受けた高齢者の利用満足度、及びVitality Index(VI)、及びプログラム実施時の様子から各高齢者に適した満足度を高める治療的アクティビティは何かを検討した。その結果、プログラム間での満足度には差がなく、どのプログラムにおいても満足度は高い傾向にあった。VIが低値の人ほど院内散歩を、高値の人ほど本・新聞の読み語り、フリー会話を実施しており、VIにあわせた治療的アクティビティが提供されていた。特にVIが低い人ほど院内散歩や気分転換が刺激を得る有効なプログラムであり、入院に伴う不安や心配を吐露できるようなプログラムが満足度につながることがわかった。 2.に関しては、入院高齢者のVIの高低差で学生の捉え方にどのような特徴があるのかを検討した。その結果、VI低値の入院高齢者には、学生はアクティビティ実施時の様子をよく観察しているが、どのように会話をすべきか苦悩していた。VI高値の入院高齢者には、さらに高齢者の強みを引き出すにはどうしたらよいかを考慮していることがわかった。 以上のことから、日本版HELPの有効性はVIにあわせたプログラム提供に関与していることと、HELPを活用した看護教育方法の有効性の示唆を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要からも、データの積み重ねを行ったことにより、年度の目標は70%達成できてはいる。しかしながら、学生のリクルートおよび病院スタッフの勤務体制の都合もあり、前年度よりもさらに実績対象者数が減少している。また、現場と教育が一体化した老年看護学教育の在り方と院内システム化するための最良の方策を考えることまでは至っていない。よって、今後は院内連携システム化の構築をはかっていくとともに、論文化し社会に発信していくことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
学生リクルート方法を再検討し、実績対象者数を増やしていきながらデータを積み重ねていくことを今後も継続していく。また、看護学部と病院スタッフとの協働という部分の実証が不足しているため、病院スタッフへのインタビュー内容を分析し、さらに既存のデータと統合し、連携システムの在り方を社会に提示していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により、研究対象者であるボランティア学生が病棟へ入ることができなくなり、予定していたサンプル数に達することができず、最終年度として論文、報告書の作成が年度末には不可能になった。 よって、次年度の計画として、①ボランティア学生の病棟への入室可能~2020年8月までHELP(介入プログラム)を実施し、研究対象者からのデータを積み上げていく、②2020年9月以降~結果をまとめ、論文化する。
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