研究課題/領域番号 |
17K12447
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉井 初美 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10447609)
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研究分担者 |
萬代 望 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (80516956)
渡部 雄一郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90401744)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セルフスティグマ / 就労 / 統合失調症 / メソッド |
研究実績の概要 |
「スティグマ」とは、「社会における多数者の側が、自分たちとは異なる特徴をもつ個人や集団に押しつける否定的な評価」の意味である。精神障害者に対するスティグマは、その存在が認められ、「障害のある人もない人も共に働く社会」を実現するための障壁となっている。また、スティグマを与えられることによって自身を社会的価値の低い人間と捉えてしまうセルフスティグマの問題も無視できず、これらが精神障害者の治療行動を低下させて病状悪化を招くこと、そして自尊心が低下して地域社会や就労から遠ざかることが分かっている。 本研究は、このセルフスティグマに注目し、統合失調症者のセルフスティグマ低減および就労意識向上のための心理社会的介入メソッドを確立することを目的としている。 統合失調症者に実効性のある心理社会的介入メソッドを確立するために、H29年度は就労にかかるセルフスティグマ低減と就労意識向上を目的としたメソッドの考案および、倫理審査申請準備を中心に研究を実施した。メソッドの考案には心理教育を採用した。心理教育とは、精神障害やエイズなど受容しにくい問題を持つ人たちに、正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え、病気や障害の結果もたらされる諸問題 ・諸困難に対する対処法を習得してもらう事によって、主体的に療養生活を営めるように援助する方法である。倫理審査申請内容は、対象施設、対象者適格基準、除外基準、症例数、解析計画、調査内容、調査方法・手順等を検討した上で確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度は、統合失調症者を対象とした就労にかかるセルフスティグマ低減と就労意識向上を目的としたメソッドの考案および倫理審査申請準備を中心に研究を実施し、調査を次年度に繰り越した。 メソッドに採用した心理教育は、1回90分、5回のセッションで構成し、2週間間隔を基本に実施するプランとした。内容は以下の通りである。 第1回;統合失調症を理解しましょう;疫学、症状、経過、治療、症状管理に関する講義。症状管理しながら就労を考えるグループ。第2回;働くためのポイント①(講義);就労上での相談を考えるグループ。第3回;働くためのポイント②(講義);事例を通して就労継続を考えるグループ。第4回;働く権利とスティグマ(講義)。就労にかかるセルフスティグマを考えるグループ。第5回;講義なし。職場に自分や病気を理解してもらうための工夫を考えるグループ。 倫理審査申請については、対象施設、対象者適格基準、除外基準、症例数、解析計画、調査内容、調査方法・手順等(ランダム化比較試験・登録方法・データ管理方法・CRF作成と管理・個人情報管理方法・安全管理責任体制・インフォームドコンセント・有害事象の評価・情報公開・試料の保存・モニタリング・研究実施体制・研究者間役割分担)を検討した上で確定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の予定で研究を進める;統合失調症者への実効性のある心理教育的介入の効果の検証 ①対象者である就労を希望する統合失調症者(介入群および非介入群)にセルフスティグマをはじめとする精神的健康度や「就労意識(相談行動、症状管理)」に関する調査を実施。調査内容;ⅰ)属性、症状管理や就労に関する質問調査、ⅱ)セルフスティグマの測定、ⅲ)就労に関するセルフスティグマの測定、ⅳ)Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS)等 ②指定した日時に、介入群にはセルフスティグマ低減と就労意識向上を目的とした心理教育を、非介入群には施設の通常活動に入っていただく。介入群に割りつけられた対象者への心理教育;各施設で実施する。1回90分5回のセッション。2週間間隔を基本に実施。非介入群には、約42名の調査結果がすべて出そろい、研究の成果が出た場合に、希望に応じて各施設で心理教育(講義のみとしグループは除く)を実施する。 ③心理教育効果の検証;ⅰ)心理教育終了約1ヶ月後に対象者全員に上記①の調査を再び行う;非介入群も同日時に実施、ⅱ)得られたデータから介入前後の変化について数理学的解明をおこない、有用性を統計学的に評価する、ⅲ)効果の得られなかった内容に関して検討する、ⅳ)就労をめざす統合失調症者の「セルフスティグマ」「就労意識(相談行動、症状管理)」等の程度と属性間での比較を統計学的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた調査を平成30年度に行なうこととしたため、それに伴う交通費や対象者への謝金等の費用などの次年度使用額が生じた。
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