研究課題/領域番号 |
17K12456
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
渡邉 久美 香川大学, 医学部, 教授 (60284121)
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研究分担者 |
難波 峰子 関西福祉大学, 看護学部, 教授 (20461238)
上野 知恵子 香川大学, 医学部, 助教 (30773858) [辞退]
國方 弘子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (60336906)
木村 美智子 弘前学院大学, 看護学部, 准教授 (70441988)
岡山 加奈 大阪市立大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (20549117) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己活用 / 治療的技法 / 精神看護学実習 / コミュニケーション / 協働 / 看護教育 / 精神科看護 / 教材開発 |
研究実績の概要 |
本年度は、精神科看護臨床において、薬物療法による治療等と異なる概念として、治療という用語に着目し、中でも、患者ー看護師関係における「治療的コミュニケーション」の位置づけについて研究者間で検討し、看護教育で活用していくための構造化を行った。 まず、古典的理論の現代的意義について確認し、精神科医療の発展過程においては、無意識を前提とした精神内界を扱う治療を医師が担い、その対象理解を援用しながら、自我の保護、生活体としての環境への適応や成長を支援するケアを看護が担うという専門性を確立してきた流れから、「対象理解」や「自己理解」において心の構造論は、精神科臨床において有用であることが確認された。 また、精神看護実践そのものを「治療的人間関係のプロセス」とするペプロウ看護論における治療の定義は、原点となりうるが哲学的、抽象的であり、初学者の学生の実習における実践においては高度な精神看護実践であることが確認された。 精神看護実践の基盤となるセルフケア看護の枠組みに基づく精神看護学実習における患者ー看護師関係における治療的コミュニケーションを学習するにあたり、精神科看護師と大学教員が共通認識のもとで活用する教材作成に向けて、精神科看護臨床で慣習的に用いられる「自分自身が、治療の道具として患者(対象)と関わる」ことを共通目標とした。初学者が、精神科看護実践における「治療的アプローチ」との関連を理解するために、教育教材開発における具体的な構造化を検討し、便宜的に〈ラポール形成〉〈保護的・支持的かかわり〉〈自己理解〉〈対象理解〉〈問題解決・成長発達志向的関わり〉などの段階的な分類を行い、実習において体験的に学習できる項目として、〈ラポール形成〉の段階では、《バイタルサイン測定》《身体接触を伴うケア》《整容へのケア》《水分・食事摂取の支援》《睡眠のアセスメント》《特技、趣味の開示》等とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最終的に活用していく冊子(成果物)について、コロナウイルス感染症対策のため、十分な推敲が行えなかった。また、病棟実習を従来、2週間の枠組みで、精神科病院において1名の入院患者を受け持たせて頂き、実習ができる大前提で到達目標や教材作成を検討していたが、現在、その実習自体の受け入れが困難な状況があり、精神看護学実習の実施方法自体を見直し、再検討する必要に迫られている。 このような中でも活用することができるように、項目の整理を行い、授業における机上で習得する知識、自己学習による演習で実践することのできる内容、学内でのグループ演習で実践できる内容について、最終確認を行う必要がある。本年度は、市中の感染状況により、対面での検討会が数回しか行えず、ズーム等での意見交換に限界があったため。
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今後の研究の推進方策 |
現段階での成果物について、最終年度に作成し、臨床側の評価が得られるように、共同研究者との対面での検討会を1ヶ月に1回以上開催し、定期的に設けていく。また、精神科看護師と共同研究者との合同でのズーム検討会について開催し、実習で使用可能なものとする。これらと並行して、印刷業者など、視覚的なわかりやすさについても支援を得ることとする。 これまで、病棟実習2週間での1名受け持ちによる関わりを主な精神看護学実習の形態として行っていたが、現実問題として、このような実習が不可能となり、いつ、このような実習が元通りに行うことができるのかも不透明な現状にある。このことから、国の施策でもある地域移行・地域定着支援にむけて、病院以外の地域の多職種との連携も視野にいれるため、アクションリサーチ的に教育、心理、就労支援、生活支援などの地域精神保健福祉の専門職へのヒヤリングを行うことも視野にいれて、早期に暫定版を作成して、評価を得ていくなど工夫をしていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終成果物として検討している冊子(実習にむけたガイドライン)について、コロナウイルス感染症での教育実践への対応と、その状況下で利活用できる教育教材としての整合性を図る必要などから、暫定版の原稿について、十分な見直しを行うことができなかったため、冊子作成にかかわる費用について、持ち越しとした。 次年度は、成果物をまとめるための資料整理のための人件費と、実習の自己学習のためのガイドライン冊子をPDFで作成するための費用として計上する予定である。
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