研究課題/領域番号 |
17K12458
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木原 深雪 九州大学, 医学研究院, 助教 (70515080)
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研究分担者 |
北岡 和代 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (60326080)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルコール依存症 / 断酒 / 中間施設 / 自助組織 / AA / 感情活用能力 |
研究実績の概要 |
アルコール依存症者は様々な心的防衛機制を示し、複雑でとらえにくい心情をもつ傾向があるため、本研究の研究参加者の確かな心情を把握するために、3年間の研究過程は文化人類学者川喜多二郎による累積KJ法にならって段階的に行う。 前年度に学内の倫理審査委員会から承認を受け、断酒に成功しているアルコール依存症者の感情活用能力がどのようなものであるのかを明らかにするために3名の研究参加者に面接調査を行った。面接時に使用したインタビューガイドはほぼ適切であった。得られたデータや文献等の収集と検討をもとに、本年度はプログラム作成のための問題提起ラウンド、現状把握ラウンド本質追求を行っている。その過程から、追加となった研究を先に行うことがよいと考えられたため、追加となった研究である、本研究で作成されたプログラムの実施対象者となるアルコール依存症者のなかでも、中間施設に通い続けている通所者、スタッフの20名に研究参加者として協力をいただき、面接を行った。面接での音声データを逐語録におこし、逐語録を何度も読み、研究対象者の意図することや感情を読み取り、本研究で重要な逐語録の部分を狭義のKJ法によって定性的に分析を行い、アルコール依存症者の感情活用能力とはどのようなものなのか、また、感情活用能力に関係している要因にはどのようなことが必要とされているのかを、面接で得られたデータの分析とともに、文献もまじえて検討し、アルコール依存症者の感情活用能力育成プログラムの原案を作成中である。プログラムの原案は共同研究者と情報交換を行い、必要時は研究参加者に意味を確認しながら行っている。 また、今年度までの成果の一部を海外誌に投稿を行っている。論文作成、査読結果への対応を行った時期には上記の研究が中断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初はアルコール依存症の自助組織に関わっている当事者を対象としていたが、研究を開始し、3名の自助組織に通っている研究参加者の状況から、本研究で作成されるプログラムを実施する際の対象者と考えられる、依存症の中間施設に通っているアルコール依存症者を対象とした追加研究が必要となった。自助組織に通っているアルコール依存症者と比較すると、中間施設に通うアルコール依存症者は、当初の想定以上に断酒後の生活が安定していないため、中間施設に通うアルコール依存症者を対象として感情活用能力やそれに関連する要因を把握する必要があり、そのための研究を追加し、面接調査、データ分析を行った。その課程で、アルコール依存症者の自助組織に通っている人々と、中間施設に通っている人々の間には、アルコール依存症からの回復の度合いにかなりの開きがあり、データ分析や文献収集に当初想定していた以上に時間を要した。 また、これまでの成果を論文にし、海外誌に投稿し、査読に対応するために研究作業が一時中断されることもあった。そのため当初予定していたよりも研究の進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
できるだけ早く、予定していた人数の面接を行い、データ分析を行う。面接の音声データを逐語録におこす際には、補助者あるいは専門の業者に依頼し、研究の進行を早くする必要が考えられる。それをもとにプログラムの作成原案を共同研究者と密に情報交換を行うことや、プログラム作成に有用な協力者に応援を求めることも検討している。年度内約5ヶ月にわたる臨床実習中に研究補助者を雇用することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究に、追加の研究が加わり、研究の進捗状況に遅れが生じているため。
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