研究課題/領域番号 |
17K12464
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
中村 博文 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90325910)
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研究分担者 |
渡邊 尚子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (30305388)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レジリエンス / 統合失調症 / 地域生活 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者に対し,QOL確立のためのレジリエンス尺度の開発を行い,信頼性・妥当性を検証することにある。 そこで地域で生活する精神障がい者240名を対象とし,2017年4月~2018年3月に質問紙調査を実施した。調査内容として,レジリエンス尺度(21項目),人口統計学的因子(性別,年齢,家族構成,婚姻の有無,最終学歴,住居形態,発症年齢,入院回数,内服薬の種類,抗精神病薬の副作用の有無)を調査した。 分析方法は,レジリエンス尺度の因子妥当性を検討するため因子分析を行った。検定には,主因子法,プロマックス回転を用いた。固有値1.00以上,因子負荷量0.40以上を基準として項目選択を行った。信頼性の検討には,Cronbachのα信頼係数を算出した。結果として,有効回答数136名(56.7%)であり,男性90名(66.2%)女性46名(33.8%),平均年齢(±S.D.)45.49歳±10.89歳,既婚者9名(6.6%)未婚者124名(91.2%)不明3名(2.2%),平均発症年齢25.05歳±10.36歳,平均入院回数3.14回±3.97回,薬剤副作用あり49名(36.0%)薬剤副作用なし81名(59.6%)不明6名(4.4%)であった。レジリエンス尺度を因子分析した結果,「新奇性追求」「肯定的な未来志向」「ネガティブな思考形成」「感情のコントロール」「気分転換」の5因子が抽出された。Cronbachのα信頼係数は,0.725~0.862と高い値を示した。因子負荷量はすべてにおいて0.50以上であった。 レジリエンスの概念は,ネガティヴな思考形成という因子名からも理解できるが,自己認知力との関連性が強いことが分かる。統合失調症患者のレジリエンス尺度には,前述した側面も鑑みて,十分に検討を重ねる必要があろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の課題として,おおむね順調に研究課題を進めることができた。既存のレジリエンス尺が,統合失調症患者にも使用できるのかどうかを調査した。その結果,統合失調症用のレジリエンス尺度開発が必要であることが分かり,質問項目の内容妥当性の検討,項目の分析を行うことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,統合失調症レジリエンス尺度の実際的な使用のための尺度開発を行い,その信頼性・妥当性を検証し,使用に耐えられるような尺度を開発していく。また,統合失調症患者のレジリエンスに影響を及ぼす要因(人口統計学的因子,社会生活状況など)の特定を行い,それらの因子モデル・構造モデルの特定化を行,支援者としてどのようなかかわりができるのかを提言していくことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費実施年度前より継続して行われていた研究だったので,当初予定していた予定額よりも実支出額が少ないものとなった。しかし,今後Sample数を多くした,調査を行うため,質問紙の印刷,データ分析,人件費,調査のための旅費等に支出される予定である。
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