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2020 年度 実施状況報告書

地域で生活する統合失調症患者のResilience尺度の開発とその強化要因の研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K12464
研究機関茨城県立医療大学

研究代表者

中村 博文  茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90325910)

研究分担者 渡邊 尚子  東邦大学, 健康科学部, 教授 (30305388)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワードレジリエンス / 統合失調症 / 地域生活 / 精神疾患 / QOL / 尺度開発
研究実績の概要

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者のResilience概念に基づいて,自己を支える資源,サポート体制,生活行動などについて明らかにし,統合失調症患者の回復力を強化させるために,どのような支援が必要なのかの示唆を得ることである。
対象は,関東圏内の地域で生活する統合失調症患者240名を対象とし、2019年10月~2020年3月に質問紙調査を実施した。調査内容として、Resilienceを「統合失調症を抱えながらも、力強く生活する回復力・逆境力」と定義し、「病気の回復にあたって,自身を支えてくれる資源(もの・ひと・自身の考え方)は何だと思うか」ということを質問した。分析方法は記載内容は意味内容に沿ってコード化し、カテゴリーを抽出して、質的帰納的に分析した。倫理的配慮は研究実施施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号935)。
結果は有効回答数94名(39.2%)であり、男性62名(66.0%)、女性32名(34.0%)、平均年齢(±S.D.)は45.1(±10.5)歳であった。136の記載内容をコード化し,10のカテゴリーが抽出された。以下,カテゴリーを『』で示す。地域で生活する統合失調症患者のResilience概念に基づく自己を支える資源は,『家族の支援』『いろいろな人(家族以外)の支援』『自己の意思・行動』『肯定的な励まし』『仕事の存在』『信仰』『生活行動のあり方』『病気からの回復感』『同疾患の人との関わり』『趣味・気分転換』が抽出された。
考察として,Resilienceの要因として、先行研究では自己価値観や環境資源が抽出されていた。本研究でも『自己の意思・行動』『肯定的な励まし』などの自己価値観等を強化・成長させるものが抽出されている。また,環境的な資源でも『仕事の存在また課題として,そのような支援方法の確立と,その教育手法の必要性も示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究期間は,3年間である。
1年目は既存のレジリエンス尺度をもとに,予備調査を行ってその因子構造を再評価することが目的であった。また,質的な質問調査も並行して行い,日常生活の中で何が精神的な回復力となっているのかを明らかにすることにあり,おおむね順調な進捗状況であった。
2年目は,統合失調症患者のためのレジリエンス尺度の実際的な使用のための尺度開発を行い,その信頼性・妥当性を検証し,わが国での使用に耐えられるような尺度を開発することにあった。尺度開発のためには,因子構造の把握を行うことが必要であり,そのために既存の尺度において様々な要因間での分析をおこない,おおむね順調な進捗状況にあった。
3年目は,Resilience尺度の開発を行い,その信頼性・妥当性を検証することにあった。そこでResilienceに影響を与えていると考えられる要因を選定し,自身が作成したResiliece尺度とそれらの関連性や妥当性を検証した。その行程は途中段階まで,進行していたが,その最終過程は家族介護の影響で,尺度の信頼性・妥当性を検証するまでには至らなかった。
4年目は延長申請をして臨んだが,新型コロナ感染拡大の影響で前述の尺度の信頼性,妥当性を検出する調査を行うことができなかった。そこで前段階の調査で,統合失調症の回復力を強化させるためにはどのようなことが必要かということを聞いていたので,その内容の質的分析を行い,尺度構成概念の検討を行った。

今後の研究の推進方策

今年度は,統合失調症レジリエンス尺度を最終的に完成させ,レジリエンスに影響を及ぼす要因(人口統計学的因子,社会生活状況など)の特定を行い,それらの因子モデル・構造モデルの特定化を行い,統合失調症レジリエンス尺度として一般化させていく。
対象として地域で生活している,全国の統合失調症患者に約500名に対して,質問紙調査を行う。
研究方法として,社会復帰施設の責任者に質問紙協力者を依頼し,研究代表者に対象者になり得る患者を紹介いただく。その後,研究者より文書を用いて研究の趣旨を十分に説明し,文書にて同意を得る。調査内容として,統合失調症レジリエンス尺度,自己効力感,自尊感情,精神症状,健康統制感,情緒支援ネットワーク,日常苛立ちごと,自身の病気のこと(病名,発症年齢,入院の回数,内服薬について,内服薬による副作用についてなど),人口統計学的因子(年齢,性別,家族構成,婚姻状況,教育年数,住居形態など)を調査する。
データの分析方法として,基本統計量の確認の後,正規性を確認し,統合失調症レジリエンス尺度を従属変数とし,その他の要因を独立変数とし,独立変数が従属変数にどのくらい影響を与えているのかを多変量解析にて分析し,各尺度の関連性が構造的に説明できるかを,共分散構造分析にて明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

科学研究費助成事業以前より継続して行われてきた研究課題であったことと,本来の最終年度(2019年度)に介護を要する家族の事案が発生したことと,新型コロナ感染症拡大により調査研究に多大な遅れが出たことにより,予算使用計画が予定通り進まなかった経緯がある。今年度は,人件費,調査費等で円滑な支出ができる見通しである。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 茨城県立医療大学博士前期課程(看護学専攻)の実績評価と将来構想2021

    • 著者名/発表者名
      加納尚美,吉良淳子,髙村祐子,富田美加,中村博文,藤岡寛,山口忍,島田智織
    • 雑誌名

      茨城県立医療大学紀要

      巻: 26 ページ: 57-72

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ICTを活用した看護学OSCEの試み2021

    • 著者名/発表者名
      山波真理,中村博文,髙村祐子,大江佳織,笠井久美,渡辺忍,吉良淳子
    • 雑誌名

      茨城県立医療大学紀要

      巻: 26 ページ: 73-86

    • 査読あり
  • [学会発表] 地域で生活する統合失調症患者の自己効力感に影響を及ぼす要因2020

    • 著者名/発表者名
      中村博文,渡辺尚子
    • 学会等名
      第30回日本精神保健看護学会学術集会
  • [学会発表] 地域で生活する統合失調症患者のResilienceに影響を及ぼす精神症状について2020

    • 著者名/発表者名
      中村博文,渡辺尚子
    • 学会等名
      第23回北日本看護学会学術集会
  • [学会発表] 地域で生活する統合失調症患者におけるResilienceの要因について2020

    • 著者名/発表者名
      中村博文,渡辺尚子
    • 学会等名
      第40回日本看護科学学会学術集会
  • [学会発表] 精神科病棟における看護師の実践内容の特徴に関する文献検討2020

    • 著者名/発表者名
      阿部準子,中村博文
    • 学会等名
      第40回日本看護科学学会学術集会
  • [学会発表] 精神看護学におけるシミュレーション教育の実態に関する文献検討2020

    • 著者名/発表者名
      長谷川陽子,中村博文
    • 学会等名
      第40回日本看護科学学会学術集会

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公開日: 2021-12-27  

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