研究課題/領域番号 |
17K12464
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
中村 博文 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90325910)
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研究分担者 |
渡邊 尚子 東邦大学, 健康科学部, 教授 (30305388)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Resilience / 統合失調症 / 要因分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者のresilience要因について明確にし,地域生活でより良く生活するための看護実践を検討することである。関東圏内の地域で生活する統合失調症患者240名を対象とし,2018年4月~2019年3月に質問紙調査を実施した。調査内容として,resilienceを「統合失調症を抱えながらも,力強く生活する逆境力」と定義し,「病気の回復には何が必要か」ということを質問した。記載内容はコード化し,カテゴリーとして抽出し,質的帰納的に分析した。複数の研究者で検討し真実性と妥当性の確保に努めた。有効回答数108名(45.0%)であった。181の記載内容をコード化し,39サブカテゴリー,9カテゴリー,4大カテゴリーが抽出された。地域で生活する統合失調症におけるresilienceの要因は,『さまざまなサポートがあること』『社会・環境等から理解があること』『良き理解者がいること』『日常生活の工夫をすること』『症状を管理すること』『趣味を持つこと』『自己の認識を大切にすること』『会話があること』『さまざまな関係性がよいこと』の9つのカテゴリーと,【さまざまな面からの理解があること】【日々の生活を大切にすること】【自分を尊重できること】【コミュニケーションが取れること】の4つの大カテゴリーが抽出された。resilienceの要因として,先行研究では価値観や環境資源が抽出されていたが,本研究でも【自分を尊重できること】のように自分の気持ちのあり方や,『趣味を持つこと』のように関心や新規性の発見などの情動に働きかけることが重要であることが理解でき,その人の価値観を認めるという看護支援が大切であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,地域で生活する統合失調症患者の方に調査を行い,Resilience尺度の信頼性・妥当性を検証することであったが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により十分な対象者が集まらなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の研究を着実に行っていく。 統合失調症レジリエンスに影響をおよぼす要因(人口統計学的因子,社会生活状況など)の特定を行い,それらの因子モデル・構造モデルの特定化を行う。その後,支援者としてどのような関わりができるのかを提言していく。 対象としては,地域で生活している,全国の統合失調症患者に約500名に対して,質問紙調査を行う。方法は,社会復帰施設の責任者に質問紙協力者を依頼し,研究代表者に対象者になり得る患者を紹介いただく。その後,研究者より文書を用いて研究の趣旨を十分に説明し,文書にて同意を得る。調査内容として,統合失調症レジリエンス尺度,自己効力感,自尊感情,精神症状,健康統制感,情緒支援ネットワーク,日常苛立ちごと,自身の病気のこと(病名,発症年齢,入院の回数,内服薬について,内服薬による副作用についてなど),人口統計学的因子(年齢,性別,家族構成,婚姻状況,教育年数,住居形態など)を調査する。データの分析方法は基本統計量の確認の後,正規性を確認し,回答のばらつきの差,平均値の差を確認する。また,統合失調症レジリエンス尺度を従属変数とし,その他の要因を独立変数とし,独立変数が従属変数にどのくらい影響を与えているのかを多変量解析にて分析し,各尺度の関連性が構造的に説明できるかを,共分散構造分析にて明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため,地域で生活する統合失調症患者に対する調査が,思うように進まず,物品費のみしか使用しなかったため。
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