最終年度の研究実績は以下のとおりである。 本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者のresilience要因について明確にし,地域生活でより良く生活するための看護実践を検討することであり,最終年度は,地域で生活する統合失調症患者のresilienceを構成する要因の構造を明らかにした。関東圏内の地域で生活する統合失調症患者240名を対象とし,調査内容として,resilienceを「統合失調症を抱えながらも,力強く生活する逆境力」と定義し,「病気の回復には何が必要か」ということを質問した。記載内容をカテゴリー化し,質的帰納的に分析した。その結果,【さまざまな面からの理解があること】【日々の生活を大切にすること】【自分を尊重できること】【コミュニケーションが取れること】の4つの大カテゴリーが抽出された。resilienceを構成する要因の構造的分析として,最も基盤となることは【日々の生活を大切にすること】であると考えられる。そして【様々な面から理解があること】によって信頼性を形成し,【コミュニケーションが取れること】によって協調性が強化される。またそこのような状態に至るまでは,統合失調症の病気ゆえの障壁を乗り越えていかなければいけないと予測される。それを乗り越えた時に【自分を尊重できるということ】につながっていくことに示唆される。 2017年度から5年間にわたって,本テーマに取り組んできたが,量的分析においては,resilienceと自尊感情,自己効力感との関連性が非常に高く,質的研究においては,「家族の支援」「他者の理解」等,情緒的なサポート体制と関連性が抽出された。これらのことから看護実践として,意思決定をともに行い,その人を尊重するような関わりをすること。また,家族の支援を十分に発揮していただくために家族教育等の支援プログラムを気軽に行えるような体制づくりが必要である。
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