研究課題/領域番号 |
17K12469
|
研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
横井 和美 滋賀県立大学, 人間看護学部, 教授 (80300226)
|
研究分担者 |
小西 文子 大垣女子短期大学, その他部局等, 教授 (00369521)
中川 美和 滋賀県立大学, 人間看護学部, 助教 (80778647)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 居宅要介護高齢者 / 音楽療法 / 集団 / 集団援助技術 |
研究実績の概要 |
本研究では、居宅要介護高齢者に対する集団音楽療法の有効性と理論的基盤を検証し、集団音楽療法プログラムの開発に向けたモデル作成をめざすものである。 2017年度は介護保険制度が開始されてから要介護高齢者の集団に対して行われてきた研究を概観し、要介護高齢者の集団に対して明らかになっていることを整理し、居宅要介護高齢者の集団に対する課題と今後の研究への示唆を得ることとした。 医学中央雑誌、メディカルオンライン、CiNii等の複数の検索システムを用いて「高齢者AND要介護者AND集団」で掲載されている原著論文56件のうち、研究対象に要介護者が含まれているものに限定した29論文を分析対象とした。 要介護高齢者の集団を対象とした論文を研究デザイン別に整理した結果、『個の集まりとして明らかにした要介護高齢者の特徴』と『要介護高齢者の集団に対して行われた介入の成果』との2つに大別できた。『個の集まりとして明らかにした要介護高齢者の特徴』には、<要介護高齢者に多い身体的特徴><要介護高齢者の口腔嚥下機能に対する特徴><要介護高齢者の生活の特徴>に関するものであった。一方、『要介護高齢者の集団に対して行われた介入の成果』では、<要介護高齢者に対する集団運動の効果><要介護高齢者に対する認知機能に関する介入の効果><要介護高齢者に対する口腔ケアに関する介入の効果><運動に対する個別プログラムと集団プログラムの成果比較><集団の特徴で比較したケアの成果>に関するものであった。 このように、個の集まりとして要介護高齢者の特徴や要介護高齢者の集団に対して介入した成果を報告したものなど身体的な特徴や機能改善を目指したものが多く、要介護高齢者間の相互作用や要介護高齢者間の関係支援につての報告は見当たらなかった。要介護高齢者間の相互作用や関係づくりへの支援を明らかにしていくことが必要であると示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
要介護高齢者の居宅福祉施設や医療福祉施設等では、高齢者のアクティビティや余暇活動として音楽活動がなされている。日本音楽療法学会国家資格推進委員会の2011年度調査によると、音楽療法の実践の場は高齢者施設(45.7%)、児童領域(28.2%)、精神科領域(20.7%)等となっており、高齢化が急激に進んできた我が国において高齢者に対する音楽療法が盛んに行われるようになってきた。高齢者に対して行われる音楽療法は集団で行われていることが多く、高齢者の社会性を支援しているものと考える。音楽療法が「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用するもの(日本音楽療法学会)」と定義されているように、高齢者の集団に対して行われている音楽療法には、どのような意図的な介入がなされているのかを明らかにする必要があると考える。 そのため、高齢者の集団に対して行われている音楽療法の研究論文(国内38件、国外37件)から、集団に対する音楽療法の効果や集団への介入目的や介入方法を分析し、ケアとして要介護高齢者にかかわる集団音楽療法における構成要素を抽出している。しかし、集団に対して記載されている部分が少なく抽出作業に時間を要している。今後、抽出された構成要素を、集団療法の相互作用と集団援助技術の視点から考察し、具体的なモデルを作成するための調査項目を検討していく。
|
今後の研究の推進方策 |
要介護高齢者の集団へのアプローチは、集団として意図的に介入したものは少ないが、個人への介入と集団への介入を合わせていくことの効果が報告されていた。一方、高齢者の集団に対する音楽療法は、集団の中での個人への介入についての報告が多くなされているが、集団としての介入方法に関して具体的な報告は少なかった。要介護高齢者の集団に対する音楽療法が、より要介護高齢者の生活の質向上や支援の効果・効率化を図れるよう、特に居宅要介護高齢者の集団に対して実施されている音楽療法に集団援助という視点がどのように組み込まれているのかを明らかにし、集団音楽療法の効果を拡充するための構成要素や介入方法について検討していく。 居宅要介護高齢者に対し集団音楽療法を行っている日本音楽療法学会認定音楽療法士に対して、実施している一連の集団音楽療法のプロセスについて参加観察や聞きとり調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外での研究発表予定で旅費を見積もっていたが、日程の都合で海外発表せず国内発表に変更した。2018年度は、海外の音楽療法士を招く費用に変更し、海外での音楽療法の現状についてディスカッションを行い、高齢者や地域での音楽療法の介入方法について情報を得ていく。
|