研究実績の概要 |
わが国では,介護・看護のために離職する家族介護者が増加し社会的問題となっている.そこで,本研究では,家族介護者の仕事と介護の両立のためのワーク・ライフ・バランスに着目し,就労している家族介護者へのサポート状況によるワーク・ライフ・バランスへの影響について明らかにすることとした. 研究1つ目として,介護支援専門員が家族介護者の就労継続のために行っている支援の内容について明らかにするため半構成的接調査を行った.要介護者を就労しながら介護している家族介護者(以下,就労介護者)を支援している介護支援専門員9人に事例を挙げてもらい,計14事例の支援内容について語られた逐語録から定性的コーディングを行った.結果,介護支援専門員は,家族介護者の就労継続のための支援として,【負担軽減支援】【心理的支援】【関係調整】【要介護者の1人で過ごすための環境調整】を行っていた. 研究2つ目として,無作為に抽出した全国の居宅介護支援事業所3,000か所を利用する就労介護者と担当の介護支援専門員を対象に自記式質問紙調査を実施した.調査票は,就労介護者と介護支援専門員のデータが突合できるよう管理した.就労介護者の調査内容は,基本属性,就労要因(就労形態,労働時間等),家庭要因(介護・家事・子どもの世話の状況等),Work-Family Conflict(WFC) Scale日本語版とした.介護支援専門員の調査内容は,基本属性や就労継続のための支援等とした.就労介護者と介護支援専門員双方から調査票の回収が得られた696人ずつを分析対象とした.結果,就労介護者のWFCの特徴として,就労介護者の性別や婚姻状況,健康や経済状況の捉え方,介護や家事,子どもの世話に対する負担感など主観的な心情との関連がみられた.また,就労介護者のWFCが高いと介護支援専門員は【負担軽減支援】【心理的支援】を行っていた.
|