本研究の目的は、地域包括ケア病棟に入院する認知症高齢者の実状を整理し、認知症高齢者を支援する病院内の専門職と在宅の専門職等が加わる多職種連携の実態を明らかにすることであった。しかし、3年間の新型コロナウイルス感染症流行により、地域包括ケア病棟での調査が実施できない状況が続いた。そこで、ようやく新型コロナウイルス感染症が落ち着き始めた2023年ではあったが、地域包括ケア病棟における認知症高齢者の実状を調査することとした。地域包括ケア病棟を有する全国2857病院に質問紙調査を実施し、582病院(回収率20.4%)から回答を得た。調査は2月に開始したため現在も集計中であり、成果報告書に全体の分析結果を報告する予定である。現時点で100病院の集計が終了しており、その結果の一部を報告する。回答した病院は、医療法人が54%と最も多く、公的医療機関(市町村)18%で、地域包括ケア病棟の病床数は50床以下が80%であった。 1)地域包括ケア病棟に入院患者で認知症と診断を受けている割合は、3割未満51件(51%)、4割以上48件(48%)であった。2)認知症と診断された方のBPSD(行動・心理症状)では、昼夜逆転が24.6%と最も多く、次いで帰宅願望20.0%、介護への抵抗14.4%、徘徊12.6%と続いた。3)地域包括ケア病棟の受け入れ元は、急性期治療を経過した患者が53%、在宅で療養を行っていた患者が42%であった。4)認知症と診断された方の退院先では、介護老人保健施設が20.3%と最も多く、次いで自宅17.2%、特別養護老人ホーム16.9%、グループホーム13.4%と続いた。5)認知症高齢者ケアで必要とする多職種チームの在り方を尋ねた所、「入院中の離床やBPSDへの対応」、「独居高齢者の退院支援」、「在宅での支援体制」等に多職種チームが必要であるとの回答を得た。
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