【在宅死を迎える患者を支援するために必要な看護能力に関する研究】において、訪問看護師による在宅死を可能にする看護支援とは何か,人を看取るための看護のあるべき姿を明らかにするために質的研究と量的研究を通して実証的に明らかにしたいと考えた。 平成31年度から令和2年度には、訪問看護を提供する側の看護師および、受ける側の家族に対して、それぞれのインタビュー調査(質的研究)から、訪問看護師に必要だと思われる資質を導きだした。その内容は、「客観的な立場で環境の調整と指導」「連携と継続した管理」「相談と要望の実現化」「迅速な対応」「高度な技術」「丁寧な態度」として抽出された(学会発表および論文投稿を行った)。 これらの結果を踏まえて、令和2年度からは、訪問看護師による在宅死を可能にする看護支援について必要な能力34項目を作成し、全 国1500か所の訪問看護ステーションを対象として量的調査を行った。この頃より、コロナ感染症の拡大の影響を受け、調査が進まないなどの障壁があったが、全国の施設から回答のあった237か所から、合計1032名の回答を得ることができた。そのデータ分析から、訪問看護師による在宅死を可能にする看護支援の内容として、「患者家族を受け止め応じる姿勢」「変化の把握と評価」「使命感を持ち気配りする」「連携と情報共有」「訪問看護に関する技術と知識」が抽出された。これらを「在宅看護における看取りの為の訪問看護能力尺度」の下位尺度として仮命名し、因子分析を行った結果、Cronbach’s α係数は,それぞれ,0.88,0.90,0.86,0.81,0.92であり、全 体では0.95であった。そのため、尺度としての内的整合性は確認された。今後,在宅看護における看取りのための訪問看護能力尺度として因子構造モデルの確認と妥当性検証を行い、学会発表と論文投稿を行う予定である。
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