研究実績の概要 |
本研究は「統合失調症入院患者の視力が影響を及ぼす事象を検証する」ことを目的とする。2017年にパイロットスタディとして統合失調症入院患者を対象に、PANSS,MMSE, NEI VFQ-25日本語版, 自動視力計を用いた視力測定,オートレフケラトメーターにてSE値を測定した。その結果、視力(logMAR)、SE値と精神状態(PANSS)、MMSEとの間に相関は見られな かった。しかし、重回帰分析による単純主効果の検定にて、罹患期間が短い群と長い群において、罹患期間が 短い群ではSE値が低い(近視度が高い)程、PANSS総合点が高くなる傾向があり、特に陰性症状においてはこの傾向が強くなる傾向があるという結果が得られ た。またNEI VFQ-25において罹患期間が短い群では、logMAR平均値が低い程、NEI VFQ-25の得点は低くなる が、罹患期間が長い群においては、NEI VFQ-25の得点が高くなるという結果が得られた。この結果は研究対象者の特徴として罹患期間が長い対象者の多くが超長 期入院者であることに影響を受けている可能性が高いと考えられる。認知機能測定用具をMMSEから、BACS―J(統合失調症認知機能簡易評価尺度) に変更した。BACS-Jの使用にあたり、経験豊富な臨床心理士に指導を受けてトレーニングを行なった。また、研究対象者の特徴として罹患期間が長い対象者の多くが超長期入院者であることに影響を受けている可能性が高いと考えられた。そのため、研究対象者の年齢を40歳以下に、入院期間を1年未満に調整した場合、統合失調症入院患者 の研究対象者が少なく、また精神症状が活発な急性期の対象者が多くなる傾向があり、研究協力を得ることが困難な状況があった。それに加えて、昨年より続くの新型コロナウイルス感染症の影響を受け現在は新たに研究対象者のリクルートができない状況である。
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