近年、独居の認知症高齢者数の増加は著しく、その支援については、ケアの拒否や、夜間の徘徊や近隣トラブルなど困難事例が多数報告されている。認知症の症状が進行するに伴い、本人が望んでいても独居生活の継続が不可能になる時期が訪れると思われるが、現在、認知症高齢者の独居生活の限界に関する具体的な指標は見当たらない。 本研究の目的は、認知症高齢者の独居生活継続のアセスメントツールを作成し、信頼性・妥当性を検討することである。 最初に先行研究の知見と専門職へのインタビュー結果などから、アセスメントツールの原案(62項目)を作成した。第1段階として、訪問看護ステーションや病院の退院支援部門に所属する認知症看護認定看護師・上級認知症ケア専門士、計32名にデルファイ法に基づき、2回のプレテストを行い、重要度やコメントを参考にして項目を洗練して44項目に改定した。第2段階として、全国調査(デルファイ法)を2回実施した。全国調査の対象は、地域包括支援センター・介護支援事業所・訪問介護事業所、訪問看護ステーションのいずれかに属する認知症ケア専門士で、1回目は319部、2回目は227部の有効回答数を得た。質問紙には、属性と認知症に対する態度尺度も記入してもらい、回答者が本調査の協力者として妥当かを検討する資料とした。2回の全国調査の結果を分析して、最終的に36項目のアセスメントツールが完成した。 今後、このアセスメントツールが臨床現場で活用できるかを検討していくことと有効な使用方法やプラン立案に向けたマニュアルを作成していくことが今後の課題である 本研究の意義は、このアセスメントツールを臨床現場で活用することによって、認知症になっても可能な限り、独居生活を継続できる支援につなげ、多他職種と共通認識のもとで独居生活の限界の時期を見極め、今後の生活の場について考えることが可能になることである。
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