研究課題/領域番号 |
17K12520
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
寅嶋 静香 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40712039)
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研究分担者 |
澤田 優美 札幌保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00585747)
森田 憲輝 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10382540)
山田 亮 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70364297)
遠藤 紀美恵 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (70382504)
小林 規 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (90260398)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 産後ケア / 健康支援 / 母親 / 産官学連携 / 健康問題 / 体力回復 |
研究実績の概要 |
本研究では、産後2~9か月の母及び乳児を対象とした、公的な倍置ける健康支援プログラムの開発及び産後ケアの方法の新たな提案を目的としている。H30年度は、H29年度に引き続き、道内の各都市と連携を重ね、より多くの地域でこれらを実施することが可能となった。そしてこの健康支援プログラムを実施した母親らのQOLに直結するような心身の健康問題の改善など、様々な健康因子が良好な変化をみせたことが、昨年同様に明らかとなった(日本母性衛生学会論文にて公表)。加えて、公的な場におけるこのような「産後こそ体力回復を行うきっかけづくりが重要」「産官学連携のスタイルが良好」と感じた母親は90%以上にのぼり、参加した母親からの講座の評価も高かった。これは、公的な場という安心感の担保と、「自身で体力回復や健康増進を行うことができる」という自律性、能力感の獲得も大きな背景である(北海道体育学会論文投にて公表) 。 さらにH30年度は、この時期の母親の「育児ストレス」等、様々な基本的健康調査を行うことが可能となり、150名近くの母親らの心身の健康状態が明らかとなった(日本母性衛生学会にて発表)。ここでは、「情報が多くて混乱する」といった育児ストレスが最も高い得点を示し、昨今の育児事情を大きく反映させるような内容が浮き彫りとなった。そして対児感情では、多くの母親が接近傾向にあるものの、一部の母親の中には、回避傾向が強いものも存在していた。またEPDS得点では、睡眠時間と得点の相関がみられた。このように、一見「前向きである」ととらえられがちな母らの実情は、様々な背景を抱えており、そのストレスを発散する場の確保として本研究の健康支援講座、体力回復講座は有意義な場であるとの判断をする母親が90%以上にも上ったことは、大きな知見集約を行うことができたものと推察する(日本乳幼児精神保健学会にて報告)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回、順調に進展している背景を以下に集約したい。 1)昨年同様に、公的な場における健康支援プログラム実施前後の健康調査では、身体的健康問題の一つである、体力要素の中の「機能面」における変容が、2時間内の講座で認められたことは一つの成果である(日本健康教育学会にて発表)。また、講座の中で、精神衛生面も変容し、ポジティブ変容が顕著であった(北海道体育学会論文にて公表)。さらには、母親らの産官学連携での実施状況に対する印象調査も、9割以上の母親らから「大変良好・良好である」との回答を頂いた。これは心身の健康問題を回復させるための支援の場として機能したことの結果といえよう(日本健康教育学会にて発表)。 2)産後のケアにおける新たな視点の提示及び産後ケアを自宅でも充実させるためのリーフレットが完成したことである。母親らへ今後このリーフレットを配布していく予定である。これは、手軽に自宅でも健康運動プログラムを行うことができる、見開き6展開のリーフレットである。A5版という小さなサイズに、運動プログラムの重要な要素のみを取り出し、カラーでイラストを多用した、視覚的にも理解しやすい内容のものである。こちらをH30年度の最終月に作成→印刷→公的な支援場へ配布 という形態をとったところ、非常に評判が高いものであり、公的な場における子育て支援にかかわる人員らからも、高い評価を受けた(H31年度の学会・論文にて公表予定)。
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今後の研究の推進方策 |
H31年度は、最終年度に該当するため、これまでH29、30年度に実施した健康支援プログラムに参加された母親らのデータを集約し、全国学会誌及び海外論文投稿を行うことを主要実施毛規格の大きな位置づけとなるだろう。さらには、H30年度末に完成されたリーフレットをもとに、H31年度は、ここから発展させた冊子の作成にも取り組んでいく。これは、今後産後の体力回復・健康増進のテキストブックへと大きく発展できる、礎となるような内容物となるだろう。この冊子化、関しては、母親らからのニーズも多く、「著書は重量が多いが20P前後の冊子であると、乳児を世話している際にも一読しやすい」とのアンケート結果が得られている(事前実施調査―H30年度の講座参加者ら、協力者55名の意見より)。 また、最終年度も、数か所の都市にてこの健康支援プログラムを実践する健康講座は展開されるため、そのデータ収集、報告公表、は継続する予定である。 この健康支援プログラム実施の際、プログラムを実践する人間の人材育成に関する点が今後の課題ではないか、というご意見を産官学連携の「産」及び「官」から頂くことができた(H30年度)。これはすなわち、母親らの「健康支援講座を受講したい」というニーズが大きく高まったことの証であると考えられる。これは、母親らがこのような「この時期こそ健康でありたい」という要求の表れであろう。そして、その要請にこたえるべく、公的な場での健康支援プログラム実施が、今後、「プログラムを実践できる人材の育成」というところに踏み込まなければならない様相を呈してきたことを見越している。よって、H 31年度は、研究から発展させた、「産」との連携による、産後の健康支援プログラムを執り行う側の人材育成におけるプログラムへも少し着手することが「産官学連携」から発展されていく形となることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の購入及び人件費が予定されていた暫定金額よりも抑えられたことが背景にある。翌年度文として請求した助成金と合わせ、次年度は不足分の物品を購入させていただき、研究論文をスピーディーに遂行するための分析ツール等も購入予定である。
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