研究課題/領域番号 |
17K12530
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
堀口 雅美 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (10217185)
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研究分担者 |
田中 豪一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10167497) [辞退]
丸山 良子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10275498)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食行動 / 首尾一貫感覚 / 慢性ストレス / 血管硬度 / 血管内皮機能 |
研究実績の概要 |
慢性ストレスを動脈の硬化度と血管の反応性からとらえて簡便かつ定量的に評価する方法は確立されていない。本研究の研究分担者と研究代表者は指動脈の弾力性を評価する指標と指細小動脈コンプライアンス拡張反応比に基づく指細小動脈拡張能検査装置の開発に着手している。本研究では指細小動脈拡張能と食行動および首尾一貫感覚の評価により慢性ストレスの定量的評価方法の確立を目指す。 平成30年度は指動脈の弾力性と細小動脈拡張能の両方を評価する独自の検査法(規準化脈波反応性充血検査:RH-NPVと略記)を開発しその医学的妥当性を担保する基礎実験を実施した。 RH-NPV検査は左右どちらかの手の第2指を5分間駆血後、開放した時生じる同指末節の反応性充血を規準化脈波容積(NPV)で測定する。検査指標のRHIは駆血開放後の駆血前に対するNPVの比で定義され、交感神経緊張の影響を同側の4指で測定したNPVの同じ比率で2重に基準化することで除いている。本法は血管内皮機能検査として確立したエンドパット検査と同様に反応性充血時の末梢動脈の拡張を評価する検査であるが、片手のみの拘束、かつ痛みがほとんどない等被検者への侵襲性が低い点が長所である。RH-NPV検査とエンドパット検査を延べ48例の青年男女と中高年男子で測定し両検査の高い一致性を実証した。 エンドパット検査で反対側の腕圧迫を前腕部に施した条件において(n=27)、 RH-NPV検査とエンドパット検査の一致性はr=.853(相関法)、エンドパット検査のカットオフ値1.67によるROC分析によればAUC=.912で、RH-NPV検査の妥当性が確認され、RH-NPV検査の最適カットオフ値=1.0448における感度=1、特異度=.86、陽性的中率=.87、陰性的中率=1であった。上腕部駆血でも同様であった(n=21)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では慢性ストレスの定量的評価指標の妥当化を以下3点について実施することとしていた。 1) 指細小動脈拡張能と基準測度としての心臓足首血管指数と加速度脈波測定システムによる血管老化度との相関分析 2) 指細小動脈拡張能と食行動および首尾一貫感覚尺度との相関分析 3) 体格指数と体脂肪率により体型を分類し、体型別の比較 1) については平成30 年度の基礎実験により目的を達成したが,「9.次年度使用が生じた理由と使用計画」に記載するように、心臓足首血管指数と加速度脈波の測定は不必要になった。2) および3) は1) の達成が遅れたため実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
倫理審査はすでに承認を受けているのでデータ収集を行い、「7.現在までの進捗状況」に記載した2) と 3)の2点に関して、健康若年成人女性からのデータの集積を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では指動脈の弾力性を評価する指標として加速度脈波の血管老化偏差値を用いる予定であったが、RH-NPV検査の開発に伴い同検査が血管内皮機能と血管硬度の両方を総合して反映することが実証された。 すなわち、エンドパット検査の検査指標FRHI(開放後90~120秒区間)は反応性充血時の脈圧の増加を表すのに対し、RH-NPV検査の検査指標FRHIvは容積増加を表す。そのため、FRHIvは血管内皮機能に加えて血管硬度の影響を受けることが判明した。基礎実験の結果、エンドパット検査指標FRHIと血管硬度指標AI@75の2 変数から従属変数のFRHIvを説明する重回帰分析を行い、極めて高い重相関(R=.950, 調整済みR二乗=.894, n=27) が得られた。 したがって、RH-NPV検査は当初予定していた加速度脈波検査に代替できることから、被検者の負担を軽減するためにも加速度脈波検査を省き、当初予定していた加速度脈波検査装置を購入しないことにした。また、RH-NPV検査の開発が遅れ、動作仕様が未確定であったため、研究参加者等への謝金の支払いは基礎実験に支出した以外の予定額を来年度に繰り越すこととした。
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