2019年度の研究目的は、訪問看護師を対象とする研修会をA県訪問看護ステーション協議会と共催し、2017年度・2018年度の調査結果をふまえ、死別後の家族介護者への支援を早期に展開するための方策について、具体的に検討することであった。研修会は「在宅医療・介護における行政(保健福祉分野)と訪問看護の連携」をテーマに、7月に開催した。参加者は27名で、各事業所が抱えている課題を共有し、その対策について地域の背景もふまえて検討することができた。具体的には「死別後支援か必要な家族介護者を見極めるための要員を既存の訪問看護情報提供書に盛り込む」「利用者が亡くなるまでの訪問期間が短かった場合は、死別後の訪問時に家族介護者の状況をアセスメンし、適切な関係機関につなげる」などが挙げられた。 2018年度に実施した「市区町村における訪問看護情報提供書の活用実態」については、関連する全国学会の学術集会において、口演発表を行った。さらに、全国学会誌に投稿し、論文掲載が確定している。3年間の研究成果のまとめとして「調査結果報告書ダイジェスト版」を作成し、A県内の全訪問看護ステーションへ送付した。地域包括ケアシステムにおける訪問看護師の役割の一つとして、支援を必要とする利用者・家族の情報を積極的に行政へ発信していく必要性を投げかけることができた。 日本の訪問看護事業所における遺族ケアの状況は、制度としての位置づけが無く、アセスメントツールを用いるなどシステマティックには行われていなかった。本研究により、訪問看護師が、利用者が亡くなる前から死別後支援が必要な家族介護者を予測し、死別後優先的に接点をもち、適切な機関係機関につなげられる可能性が示された。老老介護の末に死別後独居となる高齢家族介護者の増加が見込まれる中、充実した死別後の家族ケアが期待できる。
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