研究課題
本研究は、タイ人と日本人の高齢者を対象に、近赤外分光法(NIRS)を用いて生活背景、心理社会的側面、認知機能、脳活動を測定することにより、急速に高齢化が進むアジアの高齢者における認知機能低下の高齢者介入に関するエビデンスを構築することを目的とした。対象はタイと日本の高齢者サロンに通う高齢者で、調査項目は二重課題(DT)中の脳血流(CBF)、認知機能検査(MMSE)(MoCA)、老年期抑うつ尺度15(GDS15)、Lubben. Social Network Scale short version (LSNS-6)、WHO-QOL尺度。本研究は、研究者の所属する大学の大学倫理審査委員会の承認を得た。その結果、高齢被験者144名(タイ57名、日本87名)の結果を、認知機能(MMSE、MoCA)を従属変数として重回帰分析した結果、GDSテストのスコアとの関連がみられ(β=-. 211、P<.015)、Social-WHOQOLはより高い方が(β=. 209、P<.016)MMSEはより良好であった。単語流暢性と運動課題遂行時(DT)の背外側前頭前野部位の血流は、両国とも左背外側前頭前野領域で有意な関連(β=.412、P<.001)がみられた。本研究の結果から、タイと日本の高齢者において、うつ状態と社会的QOLが認知機能に影響を及ぼすこと、また、タイの高齢者では、日本よりも社会的孤立が認知機能に悪影響を及ぼすことが示された。特に、高齢者のうつ状態と社会的孤立を早期に発見し、予防的介入を行うことが、両国において認知機能低下の予防に有効である。また、DT実施中の背外側前頭前皮質活動の低下が、両国において将来の認知機能低下を予測する指標となる可能性を示唆していた。
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Nursing & Clinical Practices
巻: 10 ページ: 1-3
10.15344/2394-4978/2023/373