本研究は、要介護認定を受けた人の下肢機能を、床反力を用いて調べることで、将来的に転倒リスクを層別化したり、下肢機能に影響を及ぼす要因について明らかにすることで、転倒予防の介入を個別的にプログラムすることを目的としている。 対象者は、高齢者施設に入所している者とし、床反力の測定値と、下肢筋力、バランス能力、足趾の状態、身体活動量および転倒リスクや転倒経験等との関連を調べた。下肢筋力は膝伸展力を、バランス能力は開眼片足立ち時間および立位時に足裏が地面に接地している面積の左右差を、足趾は浮き趾の数を、身体活動は歩数および身体活動量を測定した。今年度の分析対象者は45名であり、身体活動量のデータが得られたのは21名であった。床反力変数と各測定項目との相関や床反力変数の各測定項目における高値群/下位群、浮き趾と転倒経験の有無による群間比較を行った。これまでの結果と同様に身体能力やバランス機能が高いほど、床反力変数も高い傾向があった。また、浮き趾の本数と床反力の最大値は有意な相関があった。歩数と身体活動量は、床反力変数と有意な相関があった。歩行活動の割合が低い群と高い群を比較した結果、高い群の方が床反力の最大値は有意に高かった。 本研究の結果、床反力変数は、要介護認定を受けるような高齢者においても、下肢機能の加齢および、転倒リスクによる変化を確認できる可能性があり、これまで実施されてきたバランス機能や下肢の筋力、身体活動量などの測定による身体機能の評価と同じ傾向が認められることが示された。また、高齢者の活動能力に大きな影響を与えると言われている足趾の状態も反映する可能性が示唆された。今後は、さらに調査対象者を増やすと共に、要介護認定を受けた人の経年変化および、床反力変数との関連が示された身体機能を効果的に高める介入方法について検討していく必要がある。
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