本研究は、積雪寒冷地域に住むMild Cognitive Impairment(以下、「MCI」と呼ぶ)の高齢者の認知症進行を予防するための身体活動量獲得プログラムを3年間で開発することである。研究の過程で発生した災害やパンデミックにより、研究計画の遅延が生じたが、2年の延長期間を経て、試験的にプログラムを実施し、成果を得ることができた。以下に最終年度の成果を報告する。 令和4年度の課題は、令和3年度までに研究者が作成した身体活動量獲得プログラムを試験的に実施し、プログラムを完成させることであった。研究中断以降も協力的であった北海道T町を研究協力地域として選定した。対象者はMCIの診断を受けた高齢者6名(平均年齢82歳)であり、研究協力地域からの同意を得た上で、研究への参加を依頼した。研究対象者には、非積雪時期と積雪時期のそれぞれ4週間、自宅で身体活動量獲得プログラムを実施してもらった。試験的に作成したプログラムは、低強度の身体活動を中心に設計され、座位時間の減少を意識した行動を促すようになっている。研究対象者には、プログラムの介入前後に心身機能を測定し、またプログラム実施中には、起床から就寝までの活動内容、時間、感想などを記録してもらうよう依頼した。プログラム終了後、積雪時期、非積雪時期におけるプログラム介入前後の心身機能、活動内容等を分析した。本研究の結果、低強度の身体活動の頻度と時間を増やし、座位時間を減らすことがMCI高齢者の心身機能の維持に関連している可能性が示唆された。特に積雪時期において、低強度の身体活動を中心としたプログラムに一定の効果があることが示された。
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