研究課題/領域番号 |
17K12541
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研究機関 | 北海道文教大学 |
研究代表者 |
多賀 昌江 北海道文教大学, 人間科学部, 准教授 (20433138)
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研究分担者 |
佐伯 和子 北海道大学, 保健科学研究院, 名誉教授 (20264541) [辞退]
鹿内 あずさ 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (50382502)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 孤立感 / 子育て / 母親 / 乳幼児 / 産後 / 育児不安 / 母子保健 / 夫婦関係 |
研究実績の概要 |
孤立感を生じるバックグラウンドを理解するために、母子保健関連学会にて現代の子育て環境に関連する事象についての情報収集を行った。尺度項目作成の前提となる質的調査によって得られたデータについて、グラウンデッドセオリーアプローチを用いた継続比較分析をしている過程にある。 分析からは、母親が子育て中に感じている孤立という感情には、「誰にも理解してもらえない感じ」、「辛くても助けを求められない感じ」、「自分のことは後まわしにしても子どものことをしなければならない」、「友人から誘われなくなる寂しさ」など、心理的な疎外感や性別役割観による実生活での負担感などがあることがわかった。そして、母親が内面で抱えている感情には、夫や身近な支援者には表現できない気持ちが積み上げられていく様相が抽出された。初産婦と経産婦では、孤立感の構造に共通する感情と異なる感情があり、特に経産婦は上の子どもの年齢と子育て経験を母親自身がどう捉えているのかによって孤立感の有無や感情の強さに影響があることが示唆された。子どもの健康状態や発達の不安があると、母親の育児不安が強まり、日常生活における精神的健康状態が不安定となる。夫婦間の意思疎通やコミュニケーションがうまくいかない夫婦関係にある場合は、母親のストレスが高まり、夫や子どもに当たるなどの行動につながっていくことが、分析過程から明らかになってきた。 孤立感の概念と孤立感が内包する感情を明確化することが、母親の孤立感を測定するための尺度項目作成には重要である。現在、分析結果について質的研究の専門家にスーパーバイズを受けながら、カテゴリーと概念の適切性について検討している。母親の孤立感の概念構造が明確化されたのちに尺度開発に向けた予備調査を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
インタビュー調査の結果を分析する過程において、大幅な業務量増加により分析に係る時間を予定より確保できず、孤立感の構造を理解するための現象理解に時間を要した。そのため、乳幼児を育てる母親の孤立感の理論的飽和には至っていない。当初予定していた質的研究の結果を学会公表、投稿する時期が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
母親の孤立感の概念構造が明確化されたのちに尺度開発に向けた予備調査を行う計画である。当初の予定よりも分析に時間を要しているため、尺度開発と尺度の妥当性を検証するためには研究期間の延長が必要となる。概念を抽出後、結果は1年以内に学会発表と投稿にて公表する。 質的研究の結果を受けて、結果の公表準備と並行しながら母親の孤立感尺度の項目策定を行う。予備調査に向けての倫理審査を受け、対象者への調査依頼・調整の後に調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた尺度開発に向けた予備調査・本調査が当初の計画より遅れて実施できなかったため、調査実施に係る人件費、旅費、物品費に減額を生じた。調査実施と分析のための機器は準備ができていることから、次年度の予備調査・本調査実施の際には人件費と調査費、連携研究者との打ち合わせ旅費に助成金を使用する。 今年度までの調査結果は、次年度開催される国際学会に発表し、英論文として投稿予定である。学会参加費・旅費と論文投稿の際に発生する費用に助成金を充当する。
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