医療的ケアを要する在宅療養児が就学する際に生じる「学校における医療的ケアの実施」に関する問題の現状と、その課題解決のための医療サービス拡充のひとつとして看護師によるケア提供のあり方を明らかにすることにより、医療的ケアを必要とする子どもたちが通常学校に就学する際の体制づくりのための基礎資料を得ることを目的とした。 平成31年度(令和元年度)は、全国の市区町村教育委員会が管轄する小学校(公立小学校)で医療的ケアを実施している看護職を対象として無記名の自記式質問紙調査(郵送法)を実施した。文部科学省の調査報告に基づいて全国すべての市区町村教育委員会に調査の打診を行い、看護職の在籍(訪問看護利用含む)および協力の意思を確認できた46市区町村教育委員会が管轄する小学校に校長経由で看護職への調査票を依頼した。調査票の内容は、看護師の年代、看護師経験年数、学校での看護師経験年数、労働および雇用形態、雇用開始年、当該小学校の看護師配置数、医療的ケアを実施している当該児童の性別、学年、所属学級、疾患、医療的ケアの内容、障害者手帳の有無と種類、自宅での医療的ケア実施者、保護者の就労状況、自宅でのサポート状況、登下校時の送迎、学校での付き添い状況、放課後の状況、きょうだい児の有無、学校での医療的ケアについてはその内容、連携の実際、医療的ケア実施にあたっての懸念、医行為に対する判断と行動、課題であった。59名の看護職から回答が得られた。分析は記述統計を算出し、自由記載は意味内容から類似する意見を抽出した。 年齢が40~60代と高く、看護職としての経験年数が長い人が目立った。学校や児童が固定している事例のほか複数学校巡回型もあった。一人体制がほとんどだが、複数の看護職を雇用しローテーションを組んでいる教育委員会もあった。人材不足、教員との連携の困難さ、業務内容の不透明さ、看護職の孤立が課題であった。
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