研究実績の概要 |
前年度は、他者との交流頻度を測定する社会的ネットワークが満点でかつ、地域で自立した生活を送る程度を測定する老研式活動能力が満点であった離島高齢女性1名に対して、聞き取り調査を行った。 前年度の結果を踏まえ、本年度の研究計画として、離島に住む虚弱高齢者の他者との交流頻度が多い人々と少ない人々の2群に分けて、人付き合いの内的課程を明らかにすることを実施した。具体的には、調査対象者の選定は、本研究期間内で地域包括支援センター専門職者らによるアンケート調査を実施していた94名を対象とし、Lubbenの社会的ネットワーク日本語版尺度(栗本ら,2011)の合計得点(得点範囲:0~30点)が20点以上(交流高群)の者:8名および10点以下(交流低群)の者:16名とした。その対象候補者から聞き取り調査の協力を得た13名(交流高群:5名,交流低群:8名)を調査対象者とした。交流高群と低群の人数差はあるが、本研究では各群内の人付き合いの内的過程を幅広く捉えることを意図した。 調査内容は、1)どのような人付き合いをしているか、2)人付き合いを続けている理由、3)人付き合いで思うことや考えることとした。分析方法は,山浦の質的統合法(KJ法)を用いた。 結果、交流高群では、【近隣住民で家族ぐるみの交流と安心感:近隣者と家族のように話せる安心感】があり、【思いやりを意識した会話:相手の立場を考えて話そうとする思い】があり、【近所の人に頼る人付き合い:自身の身体機能低下を理解して、若い人に頼る人付き合い】をしていた。一方、交流低群では、【限られた人間関係:外出はなく、血族からの支援に頼る】があり、【損得勘定のない会話:自分の心の動くままに話す】をしている一方、【知らない人には頼らない:他者との距離を意識してとる心がけ】をしていた。
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