研究課題/領域番号 |
17K12568
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井本 敦子 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 戦略職員 (80745498)
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研究分担者 |
青山 温子 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40184056)
松山 章子 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 教授 (70404233) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 子宮頸がん / 子宮頸がん検診 / 低受診率の要因 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、フィリピンにおける子宮頸がん予防行動の実態と予防行動の関連要因を明らかにし、実態に即した効果的な予防対策を提言する。フィリピン地方部および都市部の女性を対象に、子宮頸がん検診の受診状況と受診行動の関連要因を検証する。また、病気に対する住民の理解や認識について質的調査を行い、受診行動の背景要因を明らかにする。さらに、地方部と都市部の受診行動を比較する。 本年度は、マスバテ州住民女性338人に、HPV・子宮頸がん・検診に関わる知識や認識、検診受診歴等について質問紙調査を行った。また、住民女性と保健スタッフ18名に質的調査を行った。その結果、住民のHPV・子宮頸がんに関する知識は低いものの、病気への罹患性・重大性は認識していることが分かった。対象者の多くが検診の検査方法の名前を聞いたことがあり、その情報源は医療施設であったが、検診率は13.9%と低かった。また、受診行動には年齢と教育レベルが関連していた。受診行動との関連はなかったが、対象者の大半が医療施設到着まで1-3時間を要していた。検診未受診の理由には、経済的理由、症状がない、検診について知らない等が含まれた。受診理由の多くは、医療従事者による助言・要望であった。質的調査では、参加者の病気や検診の知識は乏しく、検診を治療と誤解している女性もおり、検診目的の理解不足が明らかにされた。未受診の背景要因には、受診に伴う経済的負担、検査結果への怖れ、病気に関する知識不足などがあった。以上から地方住民女性の子宮頸がん検診率は低く、子宮頸がんに関する知識や予防概念を向上するための教育機会の増加および受診に伴う経済的な負担軽減の必要性が確認された。また、医療施設が住民の検診に関する情報源となっていること、医療従事者による働きかけが主な受診促進要因であることから、検診受診率を向上する上で、医療従事者の役割の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、調査対象を都市部の住民女性に限定していたが、フィリピンの研究関係者と協議する中で、地方部と都市部では受診行動が異なる可能性があるため、地方部での調査を追加することとなった。現地での調査協力を順調に得る事ができ、HPV・子宮頸がんに関わる知識・認識および検診受診行動の実態を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、都市部マニラ市の貧困地域の住民女性を対象に、本年度地方部で実施した質問紙調査および質的調査を行う予定である。調査の実施により、検診受診率、受診行動とHPV・子宮頸がんの知識・認識、その他の因子との関連について分析を進め、それらの関連要因について検討する。また、地方部と都市部の検診受診状況を比較し、受診率向上に向けた効果的な方策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、主に旅費およびその他の経費が減じたためである。当初の予定より、フィリピン国の現地研究協力者が調査準備をスムーズに進め、現地への渡航回数が減ったこと、またその他の経費として計上していた倫理審査料や車両借り上げ費がほとんどかからなかったことによる。次年度では、都市部の質問紙調査と質的インタビュー調査を実施するため、研究協力者への謝礼、インタビューテキストの翻訳、調査用紙の印刷、消耗品、会議費、旅費等を主な費目として使用する予定である。
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