研究課題/領域番号 |
17K12575
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
中谷 芳美 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (90217753)
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研究分担者 |
坂部 敬子 福井県立大学, 看護福祉学部, 助教 (30547592)
梶田 悦子 中京学院大学, 看護学部, 教授 (50135373)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 介護予防 / 地域包括ケアシステム / 公衆衛生看護活動 |
研究実績の概要 |
高齢者の健康寿命の延伸とQOLの維持・向上をめざして介護予防を推進することはわが国の緊急課題である。本研究の目的は、地域包括ケアシステムの構築要素である自助、互助、公助・共助の実態を包括的に把握し、介護予防を推進する地域包括ケアシステムの構築に向けた公衆衛生看護活動の方法とエビデンスに基づく評価指標を提示することである。 平成30年度は平成29年度に実施した質問紙調査法による量的調査と自助、互助、公助・共助の代表者を対象にグループインタビュー法により実施した質的調査の分析を行い、報告書にまとめて関係機関・地域組織と調査協力者に配布した。 1.量的調査の分析結果:高齢者の主観的健康感は、Social Capital(以下SC)を含めた交絡要因を調整しても保健事業の利用状況・満足感、健康習慣の実施状況と関連した。高齢者の生活満足感は、交絡要因を調整してもSCの互酬性規範と社会ネットワークと関連した。高齢者による介護予防支援と生活支援の実施状況は、SCの互酬性規範、社会ネットワークと関連した。介護予防を推進する地域包括ケアシステムを構築するためには、保健事業の利用を促進し、健康習慣の実践度を高め、満足してもらえる保健事業を企画・実施すること、地域の愛着やつながりを高め、互いに助け合える環境づくりと近隣との交流を促進する地域づくりが重要であると示唆された。 2.質的調査の分析結果:介護予防を推進する地域包括ケアシステム構築に向けた課題を複合分析した。自助の課題として心身の健康を維持し、楽しみや生きがい、目標をもって生きること、互助、公助・公助の課題として自助をサポートする高齢者の健康維持のための支援、能力活用の場の提供、地域の見守りや支え合いの体制整備などが明らかになり、これらの課題への取り組みを自助、互助、公助・共助が協働して実現していく必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の当初計画は、平成29年度に実施した量的調査と質的調査の分析を行い、高齢者の健康状態・日常生活機能と自助、互助、公助・共助との関連、介護予防を推進する地域包括ケアシステムの構築をめざした公衆衛生看護活動の方法と課題を明らかにして、報告書にまとめて関係機関・地域組織、調査協力者に配布すること、得られた結果を学会発表等で公表することであった。 高齢者の主観的健康感と生活満足感、高齢者による介護予防支援と生活支援の実施状況と地域包括ケアシステムの構築要素である自助・互助・公助・共助との関連を明らかにした。グループインタビュー法による質的調査の複合分析により、自助の課題と互助、公助・公助の課題を整理して、自助、互助、公助・共助が協働して実現していく必要性を明らかにした。 さらに、介護予防と地域包括ケアシステム構築を推進するアウトリーチ活動として、調査結果を報告書にまとめ、調査対象の町、関係機関・地域組織、調査協力者に配布して報告した。 得られた研究成果は、日本地域看護学会 第21回学術集会、第77回日本公衆衛生学会総会、第38回日本看護科学学会学術集会、第7回日本公衆衛生看護学会学術集会(2題)で発表した。令和元年8月に開催される日本地域看護学会 第22回学術集会へ演題登録して、採択されている。 以上の進捗状況により、「(2)おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、平成29年度に実施した量的調査と質的調査の結果の妥当性を評価してもらうとともに、町の地域包括ケアシステムの構築に向けた課題を自助、互助、公助・共助の代表者と共有するため、平成29年度(1回目)と同じグループメンバーを対象に2回目のグループインタビューを実施し、分析する。その結果を踏まえ、平成29年度に実施した量的分析と平成29年度・令和元年度に実施したグループインタビューの質的分析を統合した混合分析を行い、介護予防を推進する地域包括ケアシステムの構築に向けた公衆衛生看護活動の方法と公衆衛生看護活動をエビデンスに基づいて評価する指標と方法を検討し提示する。 さらに、介護予防を推進する地域包括ケアシステム構築を啓発するアウトリーチ活動として、研究成果のダイジェスト版リーフレットを作成し、町民に配布する予定である。また、現場の保健師や公衆衛生看護関連職が成果情報を入手できる方法(ホームページ等の作成・開設)を検討し、得られた研究成果をとりまとめ発信するとともに、学術学会への発表と論文作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、質的調査の3グループのグループインタビュー実施後のテープ起こしを専門会社へ依頼する予定であったが、時間的制約、個人情報の保護と内容の質の担保のため、急遽、研究者自らが逐語録を起こしたため、3グループ分の15万円の経費が未使用となった。また、量的調査の質問紙調査に要する費用のうち、人件費で計上していた作業も研究者自身で実施し、物品費も図書購入費のみにしか使用しなかったため18万円の経費が未使用、学会等へ参加する旅費も都合により参加できず、16万円の経費が未使用となった。そのため、平成29年度は合計49万円を平成30年度に繰り越した。 平成30年度の残額は28万円であり、今年度請求する助成金と合わせて、研究成果のダイジェスト版リーフレットを作成し町民に配布するなど、介護予防を推進する地域包括ケアシステム構築を啓発するアウトリーチ活動や研究成果の学会発表に要する経費に使用する計画である。
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