研究課題
本研究の目的は、発達障害のある子どもと家族の就学期の移行を支える看護ケアモデルの構築をすることである。今年度は、発達障害のある子どもと家族の体験を理解し、より実践での有用性の高い看護ケアを導くために、発達障害のある子どもの母親を対象に面接調査を行った。子どもと生活するなかでの就学期の移行を中心としたご家族の体験(発達障害や現状の捉え、思い、ニーズ、生活への変化など)や就学期の移行において学校や医療者に対して求める支援などについて語っていただいた。母親は、発達障害の子どもの育ちへの戸惑い、友だちとのかかわり、学校に居ることへの苦痛から不登校になったことへの困惑、将来への希望の喪失など様々な情緒的体験をしていた。また学校内での理解者の存在、今後子どもにどのように関わっていったらよいかの適切なアドバイスなどへのニーズがあった。家族内で子どもの今後をどうするか、どこに支援を求めるかを話し合いことができる家族もいれば、できない家族もいる。また家族内での発達障害のある子どもに対する捉えや学校に子どもが行けなくなっている状況に対する捉えも異なり、温度差がある家族もある。主に子どもへのかかわりを行う母親自身の情緒的反応も異なる。様々な家族のものの見方があることを理解したうえで、就学や就職の子どものライフイベントや治療選択など、何らかの意思決定が必要な際の家族の合意形成への支援の必要性が示唆された。また、家族は時間の経過の中で親自身が子どものできること、できるようになったことを子どもとともに確認し、子どものもつ力を伸ばすかかわりを行っている。ソーシャルスキルを獲得できるよう支援すること、子どもの主体性の発揮を支援すること、子どもの自己決定を尊重すること、子どもの強みを認め、伸ばす支援の重要性への示唆も導かれた。