本研究の結果を報告書としてまとめ、全国の保健所、地域生活定着支援センター等へ配布した。 (1)「保健所に向けた刑事施設における結核対策の手引き」において紹介されている成功事例体験をもつ保健所職員(保健師、臨床検査技師等)へのインタビュー(2)結核等の健康課題をもつ刑事施設元収容者へ支援を行った経験のある地域生活定着支援センター、更生保護施設、救護施設、特別養護老人ホーム、医療機関の連携室担当者へのインタビュー(3)救護施設における受刑・触法経験者の健康課題・障がいの状況 感染症法による結核患者支援では、刑事施設の中での保健師面談による支援に必要な情報把握、とくに刑事施設出所後の生活支援については限界があることがわかった。保健所保健師等は地域生活定着支援センターについて連携の経験がなく、機能についても把握されていなかった。刑事施設や帰住先保健所、医療機関との連携だけでなく、市町村福祉部門や地域生活定着支援センターといった出所後の生活基盤の確保に重要な役割を担う機関との連携・協働を促進することで結核患者の包括的継続支援が可能になると考える。一方、地域の受け皿となる介護や福祉分野の支援者へのインタビューでは、保健医療福祉の所属や分野を超えて継続支援を行うことが難しいこと、また、自らの他にどのような支援者が関与するかといった刑事施設元収容者・触法歴のある者への健康支援の関係者やネットワークといった全体像が不明瞭であることが語られた。地域での刑事施設元収容者の受け皿の一つである救護施設においては、九州地区の1施設における5年間の記録において、継続的に病状管理・服薬管理が必要となる疾患・障がいを抱える元受刑者は33名中31名であった。特に、生活習慣病(高血圧、高尿酸血症、狭心症・心筋梗塞、がん他)の者が過半数を占め、継続的健康管理や生活習慣の改善が必要とされる状況であることが示された。
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