研究課題/領域番号 |
17K12589
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
喜多 歳子 札幌市立大学, 看護学部, 教授 (30530266)
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研究分担者 |
青山 泰子 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80360874)
本田 光 札幌市立大学, 看護学部, 准教授 (80581967)
田仲 里江 札幌市立大学, 看護学部, 助教 (40613683)
近藤 圭子 札幌市立大学, 看護学部, 助教 (50760211)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 子どもの貧困 / 公衆衛生看護 / 介入研究 / 文献レビュー |
研究実績の概要 |
胎児期・乳幼児期の貧困は、将来の保健行動と健康状態に影響する。日本でも子どもの貧困が社会問題となり支援が開始されたが、疾病予防の視点が乏しいと言わざるを得ない。自治体保健師は、疾病や障害の予防を目的とした活動を行っているが、貧困を健康リスクと捉えた予防活動は不十分で、体系化が求められる。 平成29年度は、すでに取り組んでいる先進国の報告から日本の保健師活動に適応可能なものを探索するため文献検討を行った。PubMed, CINAL, PsycINFO, MEDLINEのデータベースから‘抽出された121件の抄録を読み、「貧困状態の妊産婦と乳幼児、またはその世帯や地域を対象とした介入」「日本の公衆衛生看護活動に適応可能な介入」「公衆衛生看護活動の組織的システムや活動支援体制に関するもの」に絞り込み、重複する研究を除いた41件を選択した。 検討の結果、介入の目的は、貧困によって発生する「疾病や障害の予防」「子どものもつ脆弱性の拡大予防」「親の養育能力向上」であった。支援方法は「妊娠期から開始する頻回の家庭訪問」「対象者のニーズを優先させた支援」「子どもの発達と親子の健康に関する問題の早期発見」「パートナー・家族、友人、地域を巻き込んだ支援」「ピアサポート養成」「他職種・他機関との協働」「個人と地域の重層的システムの構築」に要約された。これらの支援は、日常の保健師活動の拡張で対応が可能である。また、支援対象を貧困世帯に特化するのではなく、一般世帯が利用できるサービスに追加的支援を行うことが受け入れられやすく効果的であると考える。平成30年度は、日本の保健師が子どもの貧困に対して行っている支援の実態をインタビュー調査により明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、文献研究と国際学会(international epidemiology conference)に参加し、子どもの貧困によって生じる健康課題とその取り組みの情報収集を行った。また、研究分担者間で研究計画と情報の共有、今後の調査内容の検討と役割分担、スケジュールの確認のための会議を開催した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、自治体保健師への半構造化インタビュー調査を行う。 最初に文献検討から得られた貧困世帯のアセスメント、看護実践、他の行政部門や地域組織/団体との連携など主要なキーワードを抽出し、インタビューガイドを作成する。 研究倫理審査承認後、研究協力者の選定と調査の依頼を行う。調査対象は、貧困世帯への支援経験のある中堅期以上の保健師(概ね経験年数が7年以上)30名を予定している。論理的飽和に至らないときは対象者を追加する。調査は子どもの貧困率15%以上が過去15年以上持続している道府県内の市区町村から人口規模(30万人以上、3~30万人、3万人未満に分類)に応じて選定する。 インタビュー調査後は、逐語録を作成し、「貧困のアセスメント視点」「具体的な支援内容」「福祉保健教育部門や地域組織/団体との連携」「支援体制を支える条件」「その他」のカテゴリーに分け、発言内容をコード化する。最終的に妊産婦及び乳幼児の貧困世帯への支援体制を体系化を試みる。また、支援が有効かつ円滑に行われるために解決すべき課題を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査に使用する備品(PC)や解析ソフト、ICレコーダーなどを平成29年度内に購入しなかったためである。調査開始までに購入予定である。
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